保安距離とは?危険物取り扱いの必須知識!必要条件や保有空地を解説

アルコールやガソリン、灯油、塗料などの危険物は、使い方を間違えると事故につながる恐れがあります。特に大量の危険物を扱う場合は、火災リスクなどを伴うため、消防法で定められた規則を守らなければなりません。

この記事では、危険物を取り扱う際に必要な知識である「保安距離」と「保有空地」について解説します。

保安距離とは

危険物を保管している建物は、災害時に付近の建物や人々に被害を及ぼさないように、保安距離を保つことが義務付けられています。保安距離が必要な保安対象物や注意点を紹介します。

保安距離が必要な保安対象物5つ

保安距離とは、建物の外壁から保安対象物までの距離を指します。保安距離が必要な対象は、以下の5つです。

  • 製造所
  • 屋内貯蔵所
  • 屋外貯蔵所
  • 屋外タンク貯蔵所
  • 一般取扱所

保管対象物との保安距離

保管対象物ごとに定められた保安距離は異なります。

■保管対象物との保安距離

7,000V~35,000V以下の特別高圧架空電線 水平距離3m以上
35,000V超の特別高圧架空電線  水平距離3m以上
敷地外の住居 10m以上
多数の人を収容する施設(例:学校、病院、劇場、公会堂) 30m以上
重要文化財 50m以上
高圧ガス施設 20m以上
第6類 酸化性液体

保安対象物の注意点

消防法では、保管する対象物を定めています。その中でも、健康な成人やそれに近い学生を収容する大学や予備校は対象外です。また保管する対象物によっては、以下のような注意点があります。

■保管対象物の注意点

  • 地中に埋設された高圧電線は対象外
  • 製造所と同一の敷地内にある住居は対象となる
  • 重要文化財を保管している倉庫は対象外
  • 多数の人を収容する施設は、規則第11条に規定される

1.幼稚園、小学校、中学校、高等学校など。大学や予備校は含まない
2.病院
3.劇場、映画館、演芸場などの施設で、300人以上を収容可能
4.児童福祉施設、障害者支援施設、老人福祉施設などの施設で、20人以上を収容可能
5.百貨店は、多数の人を収容する施設の対象外

保有空地とは

危険物を保管している建物は、保安距離以外にも、延焼防止や消火活動のために周辺に空地を確保しなければなりません。ここからは、保有空地が必要な建物や幅を紹介します。

保有空地が必要な建物

保有空地が必要な建物は、以下の7つです。

  • 製造所
  • 屋内貯蔵所
  • 屋外貯蔵所
  • 屋外タンク貯蔵所
  • 一般取扱
  • 屋外に設置する簡易タンク貯蔵所
  • 地上に設ける移送取扱所

火災が発生したとき、スムーズに消火活動を行う目的もあるため、駐車場のように空地を土地活用できません。

保有空地の幅

保有空地が必要な施設は、施設周辺を既定の幅以上、空地にしなければなりません。施設別の幅は以下のとおりです。

■保有空地の幅

条件  幅 
製造所一般取扱書 指定数量の10以下  3m
指定数量の倍数10超  5m
屋内貯蔵所  指定の数量の倍数5以下  壁、柱、床が耐火構造  ー
それ以外  0.5m
 指定数量の倍数5超10以下  壁、柱、床が耐火構造  1m
それ以外 1.5m
 指定数量の倍数10超20以下  壁、柱、床が耐火構造 2m
それ以外 3m
指定数量の倍数20超50以下 壁、柱、床が耐火構造 3m
それ以外 5m
指定数量の倍数50超200以下 壁、柱、床が耐火構造 5m
それ以外 10m
指定数量の倍数200超 壁、柱、床が耐火構造 10m
それ以外 15m
屋外貯蔵所  指定の数量の倍数10以下  3m
 指定数量の倍数10超20以下  6m
 指定数量の倍数20超50以下  10m
 指定数量の倍数50超200以下  20m
 指定数量の倍数200超  30m
 屋外タンク貯蔵所 指定数量の倍数500以下  3m
指定数量の倍数500超1,000以下  5m
指定数量の倍数1,000超2,000以下  9m
指定数量の倍数2,000超3,000以下  12m
指定数量の倍数3,000超4,000以下  15m
指定数量の倍数4,000超  ※15m以上

※タンク水平断面の高さまたは最大直径のうち大きいもの以上

指定数量とは、危険物ごとに危険性を考慮した数量で、消防法において数値基準で用いられます。

危険物を取り扱う施設

危険物を一定量以上保管するには、消防法で定められた危険物倉庫の許可が必要です。火災や爆発などの事故を防ぐため、建物の構造や保管方法、保安距離など、さまざまな安全基準が設けられています。

危険物とは

そもそも危険物とは爆発性物質・引火性物質・毒劇物など危険性のある物質を指します。消防法では、火災発生の危険が大きく、火災が発生した場合消火困難な物品を「危険物」と定義しています。第1類から第6類まであり、一定量以上の危険物は、消防法で要件を満たした施設でしか貯蔵・使用ができません。

■危険物一覧

性質 概要
 第1類  酸化性固体  固体でそのもの自体は燃焼しない。ほかの物質を酸化させる性質をもつ。

可燃物と混合したとき、激しい燃焼を引き起こす危険性を有するもの

第2類  可燃性固体 火炎によって着火しやすく40℃未満で引火しやすい固体物質。

燃焼が早く消火困難。

第3類 自然発火性物質

および禁水性物質

空気にさらされると自然に発火する危険性をもつ。

または水と接触して発火し可燃性ガスを発生するもの

第4類 引火性液体 液体で、引火性を有するもの
第5類 自己反応性物質 比較的低い温度で多量の熱を発生させ、

爆発的に反応がすすむ特性をもつ

第6類 酸化性液体 液体で、そのものは燃焼しない。

混在するほかの可燃物の燃焼促進する性質をもつ

製造所

危険物を貯蔵できる施設は、以下の3種類です。

  • 危険物を製造するための施設「製造所」
  • 指定数量以上の危険物を貯蔵する「貯蔵所」
  • 指定数量以上の危険物を取り扱う「取扱所」

製造所は、危険物を製造する目的で建てられた施設です。常時一定数以上の危険物を使用するため、建物構造や設備、配管などの建設基準が多くあります。

貯蔵所

貯蔵所とは、一定量以上の危険物を保管する施設のことです。街中で見かけるタンクローリーも、貯蔵所の一つです。タンクローリーのタンクの容量は、3リットルまでと定められています。2リットルを超える場合は、防波板を設置する必要があります。

危険物貯蔵所の種類
屋外貯蔵所、屋内貯蔵所、屋内タンク貯蔵所、屋外タンク貯蔵所、タンクローリー、地下タンク貯蔵所、簡易タンク貯蔵所

取扱所

取扱所は、小さい指定倍数で危険物を取り扱う施設です。身近なものでいえば、ガソリンスタンドやボイラー室が当てはまります。

危険物取扱所の種類
給油取扱所(ガソリンスタンド)、一般取扱所(ボイラー室)、販売取扱所、移送取扱所

危険物を取り扱う際の注意点

危険物を取り扱う場合は、標識や掲示板の掲示が義務付けられています。

移動タンク貯蔵所以外の標識は、大きさ(幅0.3m以上×長さ0.6m以上)、色(白色地に黒色文字)で名称を記載します。縦横はどちらでもかまいません。

一方、移動タンク貯蔵所の標識は、1辺0.3m以上0.4m以下の正方形で、黒色地に黄色文字で「危」を表示します。車両前後の見やすいところに掲示しましょう。

標識のほかに掲示板も設けなければなりません。掲示板は、「取り扱い危険物を表示する掲示板」、禁水や火気の注意がある場合は注意表示の掲示板も必要です。

■取り扱い危険物等を表示する掲示板
大きさは幅0.3m以上×長さ0.6m以上、白色地に黒色文字で以下の内容を記載しましょう。

  • 危険物の類別
  • 危険物の品
  • 最大数量
  • 指定数量の倍
  • 危険物保安監督者の氏名または職名

■注意表示の掲示板
1.禁水
対象は、 第1類危険物のうちアルカリ金属の過酸化物、第3類危険物のうち禁水性物品、ルキルリチウム、アルキルアルミニウムです。大きさは幅0.3m以上×長さ0.6m以上、青色地に白色文字で「禁水」と表示します。

2.火気注意
対象は、第2類危険物のうち引火性固体以外です。大きさは幅0.3m以上×長さ0.6m以上、赤色地に白色文字で「火気注意」と表示します。

3.火気厳禁
対象は、第2類危険物のうち引火性固体、第3類危険物のうち自然発火性物品・アルキルアルミニウム・黄リン・アルキルリチウム、第4類危険物すべて、第5類危険物すべてです。大きさは幅0.3m以上×長さ0.6m以上、赤色地に白色文字で「火気厳禁」と表示します。

5.給油中エンジン停止
給油取扱所では、「給油中エンジン停止」看板を見やすい所に設置しなければなりません。大きさは幅0.6m以上×長さ0.3m以上で、黄赤色地に黒色文字で「給油中エンジン停止」と表示します。

まとめ

この記事では、危険物の取り扱いに必要な知識である保安距離や保有空地について解説しました。生活するうえでかかせない「危険物」は、取り扱いを間違えると事故につながる危険性があります。

危険物を使用したり貯蔵したりする場合は、より注意を払い、規則に従って安全に取り扱いましょう。




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