危険物は倉庫で保管できる?指定危険物を保管する際の注意点や基準を解説

危険物とは、火災や爆発の危険性を有するものを指します。危険物の貯蔵や取り扱いには厳重な管理が求められ、危険物倉庫として許可された貯蔵庫で保管しなければなりません。
この記事では、指定危険物の保管方法を注意点や基準と併せて解説します。

危険物倉庫とは

危険物倉庫とは、火災や爆発事故を起こす危険性を持つ危険物を取り扱う倉庫です。この危険物倉庫は、用途に合わせそれぞれ以下の3つに分けられます。

  • 製造所
  • 貯蔵所
  • 取扱所

上記3つの危険物倉庫について詳しく解説します。

製造所

製造所は、危険物を製造する目的で建てられる施設です。例えば、建設塗料や薬剤を用いたスプレー缶の生産は危険物の製造に該当しますので、それを行う工場は危険物製造所となります。このような施設は、火災や爆発の危険性が高く、施設内外の構造には消防法の基準が適用されています。

また、取り扱っている危険物の量によっては、施設外には避雷針の設置や、危険物製造所であることを示す標識の設置、扱う危険物の性質を示す掲示板の設置などの義務も発生します。自社で扱っている危険物には、これらの条件を把握しておくことが重要です。

貯蔵所

貯蔵所とは、危険物を貯蔵する目的で建設された施設および取り扱う施設のことです。普段街中で見かけるタンクローリーも、貯蔵所の一種である「移動タンク貯蔵庫」です。貯蔵所は、貯蔵方式によって、以下の8種類に細分化されます。

  • 屋内貯蔵所
  • 屋外貯蔵所
  • 屋内タンク貯蔵所
  • 屋外タンク貯蔵所
  • 地下タンク貯蔵所
  • 簡易タンク貯蔵所
  • 移動タンク貯蔵所

1つの貯蔵所には、1種類のみの危険物を保管するのが特徴です。

取扱所

取扱所とは、危険物の製造や貯蔵以外を目的とした危険物を取り扱う建物です。ガソリンスタンドや塗料販売店、ボイラー室などが該当します。取扱所は、以下の4種類に細分化されます。

  • 給油取扱所(ガソリンスタンド)
  • 販売取扱所(塗料やエンジンオイルなどの危険物を容器の入ったまま販売する)
  • 移送取扱所(パイプや配管を使って危険物を移送する施設)
  • 一般取扱所(ボイラー室など)

消防法で指定されている6種類の危険物

危険物とは、消防法で定められた危険性の高い物品を指します。ここからは危険物の6分類と、物質の特性を詳しく解説します。

1.酸化性固体

酸化性固体とは、不燃性物質で、ほかの物質を酸化させる性質を持つ固体です。可燃物と混合すると、熱や衝撃、摩擦によって発火や爆発する危険性があります。ほとんどは無色の結晶あるいは白色の粉末状であり、オレンジや紫色などの色のものもあります。人体に有害な物質もあるため、触ったり吸入したりしないようにしましょう。

酸化性固体は、酸化されやすい物質を近くに置かないようにして、密閉した状態で冷暗所に保管します。主な酸化性固体は、以下のとおりです。

  • 塩素酸塩類
  • 過塩素酸塩類
  • 無機過酸化物
  • 亜塩素酸塩類
  • 臭素酸塩類
  • 硝酸塩類
  • よう素酸塩類
  • 過マンガン酸塩類
  • 重クロム酸塩類

2.可燃性固体

可燃性固体とは、着火しやすい固体です。40度未満の低温でも引火する可能性があり、酸化性物質と混合すると着火や爆発するリスクがあります。一度火がつくと一気に燃焼するため消火が困難です。さらには燃焼すると有毒ガスを発生させるものも存在します。

酸化剤との接触を避け、防湿に注意して冷暗所に保管しましょう。主な可燃性固体の例は、以下のとおりです。

  • 酸化りん
  • 赤りん
  • 硫黄
  • 鉄粉
  • 金属粉
  • マグネシウム
  • 引火性固体

3.自然発火性物質および禁水性物質

自然発火性物質および禁水性物質は、空気にさらされるまたは水と接触すると着火し、可燃性ガスを発生させます。容器を密封して、冷暗所に保管しましょう。

主な自然発火性物質および禁水性物質の例は、以下のとおりです。

  • カリウム
  • ナトリウム
  • バリウム
  • アルキルアルミニウム
  • アルキルリチウム
  • 黄りん
  • 有機金属化合物
  • 金属の水素化物
  • 金属のりん化物

4.引火性液体

引火性液体とは、引火点が40℃以下で空気と混合して引火する性質を持つ液体です。引火性液体の蒸気は、空気と混合すると引火や爆発の危険性があります。

容器を密封して、冷暗所に保管し、使用時は換気を十分に行いましょう。

  • 主な引火性液体の例は、以下のとおりです。
  • 特殊引火物(エーテル、アセトアルデヒドなど)
  • 第1石油類(ガソリンなど)
  • 第2石油類(灯油、軽油など)
  • 第3石油類(グリセリン、重油など)
  • 第4石油類(モーター油、潤滑油など)
  • 動植物油類(ヤシ油、ナタネ油、ごま油、オリーブ油など)
  • アルコール類

5.自己反応性物質

自己反応性物質とは、加熱分解などによって発火や爆発の危険性がある固体または液体です。加熱や摩擦によって発火するほか、高温で分解する性質を持っており、含まれる酸素により空気に触れなくても燃焼します。そのため、火気や加熱、衝撃、摩擦を避け、通風の良い冷暗所へ保管する必要があります。主な自己反応性物質の例は、以下のとおりです。

    • 有機過酸化物(過酸化ベンゾイルなど)
    • 硝酸エステル類(ニトログリセリン、酢酸エチル、硝酸メチルなど)
    • ニトロ化合物(トリニトロトルエンなど)
    • ニトロソ化合物(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)
    • アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル)
    • ジアゾ化合物(ジアゾジニトロフェノール)
    • 硫酸ヒドラジン
    • ヒドロキシルアミン
    • 硫酸ヒドロキシルアミン

6.酸化性液体

酸化性液体とは、不燃性の液体で、ほかの物質を強く酸化させる性質を持ちます。水と激しく反応して発熱するほか、腐食性があるため、取り扱いには注意が必要です。主な酸化性液体の例は、以下のとおりです。

  • 過塩素酸
  • 過酸化水素
  • 硝酸

危険物倉庫の建設に関する4つの基準


危険物倉庫は消防法で定められている位置、規模、構造、設備の基準を満たさなければなりません。基準の内容を紹介します。

1.位置

危険物倉庫は、隣接する設備への延焼や損傷を防ぐために「保安空地」と「保安距離」を確保する必要があります。

保安空地とは、火災発生時に消火活動の妨げにならないように、何も設置してはいけない空地のことです。業務に使用する資材や自転車などを置くことも禁止されているため、注意しましょう。

保安距離とは、隣接する施設から一定の距離を保つことで、以下のとおりです。

    • 特別高圧架空電線(7,000V超35,000V以下):水平距離3m以上
    • 特別高圧架空電線(35,000V超):水平距離5m以上
    • 敷地外の民家:10m以上
    • 高圧ガス施設:20m以上
    • 学校や病院、劇場のような多数の人を収容する施設:30m以上
    • 重要文化財:50m以上

2.規模

危険物倉庫の規模は「高さ6m未満の平屋、なおかつ床面積が1,000平方メートル以下」と消防法で定められています。また第2類と第4類の危険物を保管する場合は、高さ20m未満までです。

3.構造

危険物倉庫の構造は、火災が起こった際に燃え広がらない不燃材料を使用しなければなりません。保管する危険物が液体である場合は、危険物が床に浸透しないための素材を用いるほか、漏れ出た場合を想定し、傾斜をつけて「ためます」を設けましょう。

構造の留意点は、以下のとおりです。

  • 屋根は軽量金属板などの不燃材料を用いる
  • 壁や梁、床は耐火構造である
  • 床は水が侵入および浸透しない構造にする
  • 窓ガラスは網入りにする

4.設備

危険物倉庫は、適切な設備を設けなければなりません。具体的には、以下のとおりです。

  • 窓や出入り口の防災設備
  • 必要な明るさや採光を確保
  • 消火設備
  • 危険物に合わせた空調設備
  • 換気設備
  • 避雷針などの設備(指定数量が10倍以上)
  • 蒸気排出設備(危険物の引火点に応じて)

危険物は指定数量以下の場合、普通の倉庫で保管できる

危険物の量が少ない場合は、通常倉庫での保管も可能になる場合があります。例えば、各家庭のファンヒーターに使用する灯油や、工場で使用する機材のガスなどです。

危険物を取り扱う場合は、「指定量数」を知っておく必要があります。指定量数とは、消防法の適用を受ける基準となる数量です。指定量数の分類と定義を、以下に紹介します。

危険物の種類  水溶性/非水溶性  物品の例  物品の例 
特殊引火物 ジエチルエーテル、二硫化水素 50L
第一石油類 非水溶性

水溶性

ガソリン

ベンゼン

200L

400L

アルコール類 メタノール

エタノール

400L
第二石油類 非水溶性

水溶性

 灯油、軽油

酢酸、アクリル酸

1000L

2000L

第三石油類 非水溶性

水溶性

重油

グリセリン

2000L

4000L

第四石油類 ギヤー油

シリンダー油

6000L
動植物油類 アマニ油 10000L

危険物倉庫を利用する上での注意点


最後に、危険物を危険物倉庫で保管する際の注意点を解説します。

危険物取扱者の取得が必要

危険物を倉庫で取り扱う場合は、危険物の管理責任者を設定し配置しなければなりません。また、管理者は国家資格である「危険物取扱者」の取得が必要です。危険物取扱者は、「甲種」「乙種」「丙種」の3段階に分けられ、取り扱う危険物の種類によって必要な資格も変わります。

管理責任者には、危険物を取り扱っている倉庫で危険を予測して、事故を未然に防ぐことが求められます。

危険物取扱の標識と掲示板が必要

危険物倉庫では危険物取扱の標識や内容を示した掲示板の設置が義務付けられています。
標識の設置は、タンクローリーとそれ以外で内容が異なります。規定の大きさや色、内容に沿って掲示しましょう。

掲示板は、取り扱う危険物の内容を掲示したり、火気厳禁を知らせたりするものです。取り扱う危険物の性質に応じて、注意事項を掲示します。

火気厳禁

危険物倉庫には、引火性や爆発性の危険性が高い危険物を大量に保管しています。
そのため、火気を使用することは火災や爆発事故につながるため厳禁です。火が出る可能性がある道具も倉庫内には持ち込み禁止となります。

ただし、やむを得ない場合は、通風および換気が行われた倉庫から離れた場所で使用するか、区画を設けるなど火災予防上安全な措置を講じなければなりません。

定期点検の実施

危険物倉庫は、消防法第14条において定期点検の実施が義務化されています。定期点検を原則年1回以上実施し、記録を3年間保管しなければなりません。

まとめ

この記事では、指定危険物の保管方法を注意点と併せて解説しました。危険物の取り扱いを間違えると、取り返しのつかない大きな事故になる危険性があります。規則に沿って、事故が起こらないよう適切な措置を講じましょう。




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