消防設備の点検とは?倉庫で必要な消防設備や消防点検のポイントを解説

消防設備の点検とは、消防法で定められた定期的な点検です。倉庫の場合、年2回の点検と3年に1回の点検結果の報告が義務付けられています。この記事では倉庫の関係者向けに、倉庫に必要な消防設備の設置条件や定期点検の内容、消防法の注意点について解説します。

消防設備の点検とは

消防設備の点検とは、消防法第17条で規定された法定点検制度です。機器点検と総合点検の2種類があり、機器点検は半年に1回、総合点検は1年ごとに実施します。消防設備に損傷がないかを見て回ったり、実際に動かして正常に動作するか確認したりします。

また倉庫の場合は3年に1度の周期で、点検結果を消防庁や消防署長に報告しなければなりません。報告をしなかった場合は、消防法第44条に基づき30万円以下の罰金または拘留が科されます。

倉庫に必要な消防設備の種類

倉庫に必要な消防設備は建物の構造や規模によって異なるので、消防設備ごとに設置が必要な基準を消防法施行令と照らし合わせて解説します。ちなみに、消防法施行令の倉庫の分類は別表第1で定義されており、「(十四)項 倉庫」に該当します。

消火設備

消火器

初期の火災時に人が操作して消火を行うための設備です。

設置基準

  • 延べ面積150㎡以上
  • 地階・無窓階・3階以上の階で50 ㎡以上

消防法施行令第10条(消火器具に関する基準)

二 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの

五 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(地下建築物にあつては、その各階をいう。以下同じ。)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

屋内消火栓設備

初期から中期の火災に対し、人が操作して消火を行うための設備です。

設置基準

  • 延べ面積700㎡以上
  • 地階・無窓階・4階以上の階で150 ㎡以上

消防法施行令第11条(屋内消火栓設備に関する基準)

二 別表第一(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が七百平方メートル以上のもの六 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十二)項まで、(十四)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上の階で、床面積が、同表(一)項に掲げる防火対象物にあつては百平方メートル以上、同表(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物にあつては百五十平方メートル以上、同表(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物にあつては二百平方メートル以上のもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

スプリンクラー

建物の天井に設置し、火災時に自動的に散水する装置です。

設置基準

  • 11階以上の階
  • ラック式倉庫で天井高さが10mを超え、延べ面積700㎡以上

消防法施行令第12条(スプリンクラー設備に関する基準)

三 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六)項イに掲げる防火対象物で、地階を除く階数が十一以上のもの(総務省令で定める部分を除く。)五 別表第一(十四)項に掲げる防火対象物のうち、天井(天井のない場合にあつては、屋根の下面。次項において同じ。)の高さが十メートルを超え、かつ、延べ面積が七百平方メートル以上のラック式倉庫(棚又はこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫をいう。)

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

警報設備

自動火災報知機

火災による熱や煙を検知し、ベルや音声などで知らせる装置です。

設置基準

  • 延べ面積500㎡以上
  • 地階・無窓階・3階以上の階で300㎡以上

消防法施行令第21条(自動火災報知設備に関する基準)

四 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項、(十二)項、(十三)項イ及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの

十一 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物の地階、無窓階又は三階以上の階で、床面積が三百平方メートル以上のもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

漏電火災警報機

電気機器に係る漏電を検知して、それを知らせる装置です。

設置基準

  • 延べ面積1000㎡以上

消防法施行令第22条(漏電火災警報器に関する基準)

五 別表第一(十四)項及び(十五)項に掲げる建築物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

火災通報装置

火災発生時に消防機関へ自動で通報する装置です。

設置基準

  • 延べ面積1000㎡以上

消防法施行令第23条(消防機関へ通報する火災報知設備に関する基準)

三 別表第一(三)項、(五)項ロ、(七)項から(十一)項まで及び(十三)項から(十五)項までに掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

非常警報器

火災などの非常事態を、周囲に知らせるために用いる器具です。

設置基準

  • 収容人数が50人以上
  • 地階または無窓階の収容人数が20人以上

消防法施行令第24条(非常警報器具又は非常警報設備に関する基準)

二 前号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十七)項までに掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの又は地階及び無窓階の収容人員が二十人以上のもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

避難設備

避難器具

避難はしごや避難すべり台、避難ロープなどが該当します。

設置基準

  • なし

消防法施行令第25条(避難器具に関する基準)によると、「(十四)倉庫」は避難はしごや避難すべり台などの設置義務は明記されてないので不要です。

誘導標識(誘導灯)

避難経路を示して、避難誘導をするための設備です。

設置基準

  • 地階・無窓階・11 階以上の階は誘導灯
  • 全ての階で誘導標識

消防法施行令第26条(誘導灯及び誘導標識に関する基準)

一 避難口誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分

二 通路誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分

四 誘導標識 別表第一(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

消防点検の内容

消防設備は設置したら終わりではありません。消防法第17条の3の3により定期点検が義務付けられています。半年に1回の機器点検では主に損傷や変形がないか、1年に1回の総合点検では実際に動作させて確認し、点検結果は「維持台帳」に記録します。それでは、それぞれの点検で確認する内容を消防設備ごとに紹介します。

機器点検(半年に1回)の場合

機器点検では消防設備の外観や設置場所の確認、簡単な操作によって状態を点検します。

消火器
消火器の本体と表示や標識に損傷や変形がないかを確認
消火器の設置状況を目視または簡易な測定で確認
指示圧力値が緑色範囲内にあることを確認

屋内消火栓設備
貯水槽や給水装置、水位計やバルブ類に損傷や変形がないか確認
加圧送水装置の外形やスイッチ類に損傷や変形がないか確認
ヒューズ、電球などの予備品、回路図、取扱説明書が備えてあることを確認

スプリンクラー
スプリンクラーヘッドに損傷や変形がないか確認
ヘッドの周囲に感熱を妨げるものがないか確認
感知器の作動により加圧送水装置の起動を確認

自動火災報知機
予備電源及び非常電源に損傷や変形がないか確認
感知器が正常に動作することを確認

漏電火災警報機
受信機・変流器・音響装置の外形に損傷や変形がないか確認
電源表示灯が正常に点灯していることを確認

火災通報装置
予備電源や本体に損傷や変形がないか確認
発信機からの信号が消防機関に正常に送信されることを確認

非常警報器
非常電源・非常ベル・自動式サイレンの外形に損傷や変形がないか確認
所定の電圧及び容量の表示が適正にされていることを確認

避難器具
損傷や変形、さびや腐食がないか確認
すべり台の勾配はおよそ25度から35度であるか確認

誘導標識(誘導灯)
誘導標識の外形に損傷や変形がないか確認
誘導標識の視認性に問題がないか確認

総合点検(1年に1回)の場合

総合点検では、実際に消防設備を作動させて総合的な機能を点検します。

屋内消火栓設備
加圧送水装置が正常に動作するか確認
放水圧力や放水量が基準を満たしているか確認

スプリンクラー
加圧送水装置が正常に動作するか確認
放水圧力や放水量が基準を満たしているか確認

漏電火災警報機
正常に作動し、すべての作動電流値は、公称作動電流値(作動電流設定値)に対
して +10%、-60%の範囲であることを確認
音響装置の音圧が、70dB以上であるか確認

非常警報器
ベル及びサイレンの音圧が、90dB以上であることを確認
火災表示及び音響装置並びにスピーカーの鳴動が正常に行われることを確認

避難器具
避難器具を目視および器具の使用により確認

倉庫に関係する消防法の注意点

倉庫に関係する消防法で、特に注意が必要なものは3つ挙げられます。

  • 従業員50人以上で防火管理者が必要
  • 有資格者の点検が必要な場合もある
  • 3年に1度の点検結果の報告義務

それぞれの注意点を消防法と照らし合わせて解説します。

従業員50人以上で防火管理者が必要

消防法施行令第1条の2の3により、収容人員が50人以上の倉庫では防火管理者の選任が必要です。収容人員は、従業者の数により算定します。万が一の火災に備えて、「消防計画の作成・届出」「訓練の実施」「消防設備の点検及び整備」を行わなければなりません。

防火管理者を定める基準

  • 収容人員が50人以上

消防法施行令第1条の2の3(防火管理者を定めなければならない防火対象物等)

ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの

消防法施行令第1条(防火管理者の責務)

第三条の二 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。

2 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。

有資格者の点検が必要な場合もある

消防法施行令第36条第2項によると、非特定防火対象物で延べ面積が1,000㎡以上かつ、消防長または消防署長が指定するものは、消防設備士または消防設備点検資格者の点検が必要です。

非特定防火対象物とは、特定の人が利用する建物のことで、有資格者とは、消防設備士または消防設備点検資格者のことを指します。

延べ面積が1,000㎡未満の場合は、関係者が自ら点検を行うか、防火管理者などに命じて点検を行う必要があります。

有資格者の点検が必要な条件

  • 非特定防火対象物で延べ面積1000㎡以上
  • 消防長又は消防署長が指定するもの

消防法施行令第36条の2

2 法第十七条の三の三の消防用設備等又は特殊消防用設備等について消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者(第四号において「消防設備士等」という。)に点検をさせなければならない防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。

二 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項及び(十八)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもののうち、消防長又は消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するもの

消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)

3年に1度の点検結果の報告義務

消防法第17条の3の3の規定により、消防点検の結果を消防庁または消防署長への報告が義務付けられています。非特定防火対象物に分類される倉庫の報告周期は3年に1度です。報告義務に違反した場合は、消防法第44条の11により30万円以下の罰金又は勾留が科せられます。

消防法第17条の3の3

第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。

消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)

消防法施行規則第31条の6の3(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)

二 令別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項及び(十八)項までに掲げる防火対象物 三年に一回

消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)

まとめ

倉庫に必要な消防設備や設置条件、消防点検の内容について解説しました。消防設備の点検とは、消防法第17条の3の3に規定された定期点検のことです。消防法施行令で規定された設置条件によって必要な消防設備は異なるので確認が必要といえるでしょう。

消防点検には2種類あり、設備点検では設備に損傷や変形がないか、総合点検では設備が動作するか確認します。火事はいつどこで起こるかわかりません。被害のリスクを最小限に抑えるうえで、日々の備えは重要といえるでしょう。




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