工場の耐用年数はどのくらい?耐用年数の概要やメンテナンスの流れも含めて解説

工場には耐用年数があり、年数を把握していることで工場のメンテナンス時期を考慮でき、建物の寿命を伸ばせます。また耐用年数は、建物の減価償却費の計算時にも参照され、節税にも関係する基準です。この記事では、工場の耐用年数の概要や、それに伴うメンテナンスの必要性、また法定年数が定められている理由などを含めて解説します。

工場の法定耐用年数とは?

「法定耐用年数」は、工場などの建物・車などの固定資産が使用できる期間です。固定資産である工場は「減価償却資産」であり、物理的に消耗することにより価値が下がります。その価値が喪失されるまでの期間が「耐用年数」です。耐用年数は「経済的耐用年数」と「物理的耐用年数」に分けられ、それぞれの内容は以下になります。

減価償却資産とは
時の経過により、物理的価値が下がる資産のこと

減価償却とは
事業主が使用する固定資産は、その使用期間に応じて、購入価額を分割して経費に計上することがあります。これを減価償却といいます。たとえば、300万円の固定資産を、その年に全額経費にすることはできません。そのため、300万円を何年かに分けて経費に計上するのです。

経済的耐用年数とは
対象資産の経済的価値がある期間

物理的耐用年数とは
対象資産が物理的に使える期間

耐久年数との違い

建物の「耐用年数」と「耐久年数」の2つの言葉は似ていますが、意味は異なります。「耐用年数」は、建物などの固定資産が使用に耐えられなくなるまでの期間を法的に定められているものであり、その期間が過ぎれば使用してはいけないというわけではありません。あくまでも減価償却の目安になる年数であり、資産価値を算出する時に使われます。

耐久年数とは、メーカーなどの独自の調査に基づいて、工場などの対象資産が問題なく使用できると判断されている目安の年数です。減価償却とは異なり、資産そのものが使える期間を指します。

法定耐用年数を定めている理由

法定耐用年数は、国税庁が定めた「固定資産の資産価値が帳簿上から消滅するまでの期間」を指します。この年数は、建物の所得税算出の「減価償却費を計算する時」に参考にされ、節税に関係します。以下は所得税算出における流れです。

減価償却費の計算
減価償却費の計算は、建物の法定耐用年数と取得費が明らかであれば、割り出すことが可能です。この計算で会計上の収益が減少することにより、課税所得が下がるため節税になります。

  • 減価償却費=取得価額×0.9×売却率×経過年数

工場の耐用年数は建築法で変わる

建築方法を基準にした耐用年数は、公的に定められてはいませんが、大まかな傾向はあります。以下は、工場の建築方法と耐用年数の一覧です。

工場の建築方法
建築方法 プレハブ工法 システム建築 在来工法
耐用年数 20年以上 30年以上 30年以上
耐久性 外壁の耐久性は高いが、屋根の耐久性は低い 耐久性の高い部材を使っているため、品質が安定している。風土や気候に沿ったつくりのため、気候変動に強い メンテナンスの頻度により、長く使える

プレハブ工法
工場で加工された材料を現場で組み立てます。

システム権築
基礎や屋根などの材料を企画化することにより、低価格・短い工期・高品質な建築を可能とします。

在来工法
柱や梁などの、専門技術者によって引き継がれている、日本の伝統的な工法です。

建物の構造別の耐用年数

工場の耐用年数は、構造や建築方法、立地環境、使い道などによって異なります。建物の構造には鉄筋コンクリート造・木造・木骨モルタル造などがある中、木造で建てられた工場の場合の耐用年数は15年、鉄筋コンクリートの場合は38年です。また、定期的なメンテナンスを行うことで耐用年数を長持ちさせられます。

構造別の建物の寿命

構造別の建物の寿命は「法定耐用年数」として規定されています。工場の構造による耐用年数は以下になります。

工場の構造による耐用年数

  • 木造/合成樹脂造の工場 15年
  • 木造モルタル造の工場 14年
  • 鉄骨鉄筋/コンクリート造/鉄筋コンクリート造 38年
  • れんが造/石造/ブロック造 34年
  • 金属造
    4mmを超えるもの 31年
    3mmを超え4mm以下のもの 24年
    3mm以下のもの 17年

耐用年数より重要なのは状態

工場の劣化具合を確認するために、有効なものは文部科学省が出している「点検チェックリスト」です。このリストでは、部材ごとの点検項目と劣化状況を判断できるように基準が設けられているため、一般の方でも簡単に建物の状態を確認できます。

耐用年数のチェック項目

点検チェックリストには建物の「内装材」や「照明などの設備」といった多くの点検項目があります。この項では屋根と外壁の部分を抜粋して紹介します。

点検項目

  • 屋根 陸屋根/かわら/金属屋根
  • 壁 タイル/外壁仕上塗材

劣化項目

劣化状況 変形 剥離 ひび・破損 変質
脱落
落ちそう
垂れている
へこんでいる
傾いている
曲がっている
はがれている
膨らんでいる
ひび割れている
割れている
折れている
腐っている
さびているなど

 

建物の各部材の劣化状況をこのようなチェックシートで細かくチェックし、以下の3つの項目により総合的な評価をします。

A:異常はない、または対策済み
B:異常があるか判断がつかない、またはわからない
C:異常がある

工場のメンテナンスの流れ

工場のメンテナンスは構造部分や設備全てをチェックする業者から、耐用年数に応じた点検だけを行う業者などさまざまです。業者との行き違いを無くすために、メンテナンス前には劣化の箇所を確認して、具体的に伝えられる準備をしておきましょう。この項では一般的に行われるメンテナンスフローを紹介します。

1.メンテナンスを依頼する
メンテナンスの業者を選ぶ際にはたとえコストがかかっても、実績と信頼がある専門知識を持った業者を選んだ方が、工場の寿命を伸ばせます。

2.点検の内容を説明してもらう
一般的には、メンテナンスの前に工場側との点検があります。メンテナンス業者から行われる点検の内容を説明してもらい、分からないことがある場合には担当者に質問します。

3.目視点検を行う
業者側での目視の点検により、工場の劣化や破損のチェックをします。普段気になっている部分は、この時にチェックしてもらうとよいでしょう。従業員に気になるところがあるか、確認を事前にしておくと、メンテナンス漏れを防げます。

4.修繕を行う
目視点検の後に破損が確認されたら、修繕に入ります。業者側とのメンテナンス行程チェックを忘れないことと、メンテナンスがなぜ必用なのかという説明を受けることが大事です。

建物が老朽化した際のリスク

工場の老朽化は避けられませんが、老朽化した設備の使用継続はトラブルを招き、生産性を低下させます。ここでは老朽化した工場の使用に伴う具体的なリスクを紹介します。

生産性の低下
工場の老朽化により設備の不具合が生じ、修繕時間のロス・修理に要する人件費の問題・不良品発生リスクが高まります。これらの問題により、本来の製造に当てるはずの時間をロスし、結果的に損となってしまいます。

労働災害の発生リスクの増加
老朽化により引き起こされる災害の発生は、最も気をつけたい項目です。建物の老朽化により、漏電などによる「火災」や、従業員の「はさまれ」「巻き込み」などの事故が起きやすくなります。

故障部品の入手が難しくなる
工場設備の老朽化に伴い、メーカーの器具もモデルチェンジするため、交換部品の供給も終了してしまうことが少なくありません。部品調達ができないために工場の稼働が滞り、生産性を下げることがないよう、老朽化した設備の見直しは必須です。

まとめ


この記事では、工場における耐用年数の概要や法定耐用年数を定めている理由、またメンテナンスの流れなどを解説しました。建物の法定耐用年数は、減価償却費の計算時に使われ、税金を抑える術にもなり得るため重要です。

また、工場の生産活動に支障を出さないために、建物の定期的なメンテナンスも必須です。メンテナンスを後回しにすると、万が一の自然災害時などで多大な被害を出してしまう恐れもあります。このように工場の耐用年数を把握することは、節税の対策や適切なメンテナンス時期を判断するための得策になります。耐用年数を知り、工場の適切な運営を行う手立てにしましょう。




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