家や建物を建てた場合、不動産登記が必要になります。では、倉庫を新たに建てたときはどうなるかご存じでしょうか。倉庫は不動産登記が必要なケース・不要なケースがあります。この記事では、倉庫で不動産登記が必要になる条件や登記方法を解説します。
不動産登記とは
不動産登記は、建物の情報や所有者が誰なのかを明確にするために、登記簿に登記することを指します。登記簿は登記が義務化されている表題部と、任意の権利部に分けられています。
<登記簿記載事項>
区分 | 記載事項 | ||
表題部 | 義務 | 建物の所在や家屋番号、構造、床面積、所有者の氏名など | |
権利部(甲区) | 任意 | 所有権に関する情報 | |
権利部(乙区) | 所有権以外の権利に関する情報 |
ここからは、不動産登記の目的や必要になるケースをみていきましょう。
不動産登記の目的
不動産登記は、社会において経済価値の高い不動産取引を、安全かつ円滑に図るための制度です。不動産登記を行った建物の情報は、法務局が管理している帳簿を誰でも閲覧できます。権利関係を確認できるため、安全でスムーズな取引が行える役割を担っています。
登記をしていない建物の場合は、ほかの人に権利を侵害されても抵抗できず、所有権を主張できません。不動産登記がもつ「対抗力」「権利推定力」「形式確定力」によって、所有者の権利は守られています。
不動産登記が必要なとき
新しく不動産を取得したときは、不動産登記が必要になります。登記後、もし氏名や住所が変更になったり、ローン返済が終わったりと登録名義人の変更が発生した場合は、登記変更を行います。
そのほか、解体などで建物がなくなったときも、建物滅失登記を行う必要があるため注意しましょう。
<倉庫業で不動産登記が必要になるケース>
登記が必要なケース | 登記内容 |
倉庫を新築した | 物表題登記、所有権保存登記(権利部甲区)
ローンを組んだ場合は抵当権設定登記(権利部乙区) |
新たに倉庫を取得した | 所有権移転登記 |
氏名が変更になった | 氏名変更登記 |
住所が変更になった | 住所変更登記 |
ローン返済が終わった | 抵当権抹消登記 |
建物を解体した | 解体から1か月以内に建物滅失登記を行う |
倉庫の登記が必要になる条件
倉庫の登記が必要になる条件は、4つ存在します。「取引性」「用途性」「土地の定着性」「外気分離性」が条件で、すべてを満たす倉庫は登記が必須です。それぞれの条件内容をみていきましょう。
取引性
取引性は建物に価値があるかどうかで判断されます。不動産登記は安全かつスムーズな取引をするための制度であるため、建物が独立しても取引の対象となる価値があるかは、重要な条件になります。
用途性
倉庫は、物品を貯蔵するなど、人や荷物を置いておくことができる建物であることが必要です。天井の高さが 1.5 メートル未満の倉庫は、人や荷物を置けないため、用途性がないと判断され登記できません。
土地の定着性
倉庫は、土地に一定期間以上固定されている必要があります。一定期間で取り壊される倉庫や、簡単に移動できる倉庫は、土地に定着していないため、登記できません。
外気分離性
倉庫は、外気から雨や風を遮断できる必要があります。壁が最低三方向に設置され、天井の高さが1.5メートル以上ある倉庫は、外気から遮断できるため、登記できます。
倉庫の登記方法
新設した倉庫が登記対象の場合、期限内に手続きを行いましょう。ここからは登記の流れや必要書類を解説します。
登記に必要な書類
登記申請をするために、まずは必要な書類を準備しなくてはなりません。登記手続きの必要書類は、以下のとおりです。
- 登記申請書
- 代理権限証書(署名と捺印が必要)
- 所有者の住民票
- 印鑑証明・実印
- 建物図面・各階平面図(一般的に土地家屋調査士が作成する)
- 所有権証明書(工事完了引渡証明書、検査済証、建築確認通知書)
- 工事の領収書
自分で申請する場合は、代理権限証書は必要ありません。
登記の流れ
登記手続きは、専門家に依頼するもしくは自分で行えます。手続きの流れは、以下のとおりです。
- 必要書類を集める
- 申請書を作成する
- 法務局に提出する
- 審査を受ける
- 登記情報書類を受け取る
登記の代理申請は、司法書士に依頼できます。不安な方は複数の司法書士へ見積もり依頼し、利用を検討してみると良いでしょう。
登記の注意点
所有権保存登記には、登録免許税が発生します。登録免許税額は、不動産の固定資産税評価額に税率を乗じた金額です。
例えば、新たに固定資産税評価額が300万円の倉庫を取得したとします。新築した倉庫の税率は0.4%なので、固定資産税評価額が300万円の場合は、12,000円を支払わなければなりません。
<登録免許税の計算方法>
登記内容 | 登録免許税額 |
所有権の保存 | 固定資産評価額×4/1000 |
売買や贈与などによる所有権移転 | 固定資産評価額×20/1000 |
相続による所有権移転 | 固定資産評価額×4/1000 |
未登記のままだとどうなる?
未登記のまま放置しておくと、どうなるのでしょうか。ここからは、未登記建物の罰則やデメリットを紹介します。
期限内に登記しなければ罰則がある
新たに倉庫を建設した場合は、1か月以内に不動産登記をする必要があります。仮に登記が必要な建物を未登記のままにしていると、不動産登記法第164条により、10万円以下の過料が科せられます。
未登記の場合は売却ができない
未登記倉庫は、自分の所有物だと主張できないだけでなく、売却するのも難しくなります。
また、未登記建物は抵当権を設定できません。ローンを組む際の担保にならず、ローンを組まずに購入しなければならないデメリットも発生します。
まとめ
この記事では、倉庫で不動産登記が必要になる条件や登記方法を解説しました。建てた倉庫の規模や構造によって不動産登記が必要です。登記が必要な建物を放置すると、所有権を主張できず罰則も科せられます。条件を確認して、該当する場合は速やかに手続きをしましょう。
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