倉庫やトランクルームを借りることで、業務に必要な物資や個人の大切な荷物を安心・安全に預けることができます。定義や役割の異なる倉庫とトランクルームですが、倉庫と一口に言っても種類があり、トランクルームも同様に種類分けがされています。倉庫とトランクルームの違いを知ったうえで、預けたい荷物や用途に適した方を選びましょう。
この記事では、倉庫とトランクルームの違いやそれぞれのメリット・デメリット、借りる際の費用相場などについて解説します。
倉庫とは
ここからは、倉庫の定義とその役割、種類について解説します。
倉庫の定義
倉庫は、一般的には「貸物や荷物などを保管したりするための建物」という意味合いが強いと言えます。法律的な定義は、「物品の滅失もしくは損傷を防止するための施設」と倉庫業法では説明されています。なお、倉庫は建物だけでなく「水面」や「工作を施した土地」も対象です。
倉庫の役割
倉庫は荷物を保管・管理するだけでなく、以下の役割があります。
- 金融補助
- 生産から消費までの時間差の調整
- 輸送機関間の連絡調整
- 商品の受け渡しを効率化する
- 流通加工
倉庫の種類
倉庫は大きく分けて「営業倉庫」と「自家用倉庫」の2種類があります。それぞれ倉庫業法で定められており、法律に準じて可能なことと不可能なことがあるため、使用にあたって倉庫の違いをよく理解しなければなりません。役割を理解していないと、法律違反となる可能性があるため、それぞれの違いを確認しましょう。
ここからは、「営業倉庫」と「自家用倉庫」の違いを解説します。
営業倉庫
第三者から預かった物資を保管するための倉庫です。営業倉庫として国土交通大臣による登録を受け、他社からの荷物を預かり保管することで収益を得られます。
ネットショップを運営している個人や事業者向けの在庫管理や検品、ピッキング、梱包、出荷の作業の代行が可能です。なお、倉庫業法で定められた規制では、預かる荷物への火災保険の付保が義務付けられています。
営業倉庫は「普通倉庫」「冷蔵倉庫」「水面倉庫」と用途ごとに分けられています。営業倉庫の種類は以下のとおりです。
概要と預けられる物品の例 | |
1類倉庫
(建屋) |
特に保管物品の制限がない(危険物等は除く) 一般雑貨、米など保管可能 |
2類倉庫 (建屋) |
耐火性能がないため、保管物品に制限あり 麦、でん粉、飼料、野菜類、果実類など保管可能 |
3類倉庫 (建屋) |
防水、防湿、耐火性能、遮熱のほか、防鼠措置がない 保管物品に制限あり 陶磁器、ガラス器など保管可能 |
野積倉庫 (整地) |
野積みの状態で保管し、周囲を柵や塀などで防護する必要あり 鉱物、土石、原木、レンガ、かわらなど保管可能 |
貯蔵槽倉庫 (サイロ・タンク) |
ばらで保管する物品や液体の保管可能
小麦粉など保管可能 |
危険品倉庫 (建屋・タンク) |
石油、化学薬品(灯油・ガソリンなど)の危険物の保管可能 |
トランクルーム | 個人の物品(絵画・事務文書など)を保管する倉庫 |
水面倉庫 | 原木を水面において保管する倉庫 |
冷蔵倉庫 | 農畜水産物の生鮮品や冷凍品、加工品など10℃以下の物品の保管可能 |
自家用倉庫
個人や企業などが自身の荷物の保管・管理に用いる倉庫です。自社製品などの貸物の保管・管理のみに適用されるため、他社の貸物の預かり・保管はできません。自家用倉庫は営業倉庫と比較すると、移動時間や作業時間などのコストを削減できます。
トランクルームとは
ここからは、トランクルームの定義とその役割、種類について解説します。
トランクルームの定義
トランクルームとは、個人の家財や美術品などの物品を、一定期間預ける寄託契約のサービスです。倉庫業法に基づき、国土交通省に営業倉庫の登録をした事業者のみが契約できます。倉庫業のトランクルームは、国の基準を満たした施設であり、安心して荷物の保管・管理を任せられます。
事業者には保管料を定めて、国土交通大臣に届け出をしなければなりません。
トランクルームの役割
トランクルームは「引越し後に住居が狭くなった」「趣味で集めた物が増えた」「書籍や書類が増えた」などの場合に、一時的に荷物を預けることができ、短期間だけの利用に重宝します。
また、トランクルームは荷物を預ける側にとって、以下のケースで役立つでしょう。
- 転勤の間の荷物保管
- 子どもの独立により、不用品が増えた
- リフォームの間の荷物保管
- 仕事道具の倉庫として
自転車やバイクなどの駐輪場代わりとして、着替えのスペースとして利用する人もいて、トランクルームの役割は単に荷物を預けるだけではありません。
トランクルームの種類
トランクルームは、大きく「屋外型」「屋内型」「宅配型」の3種類に分けられます。
屋外型トランクルーム
主にコンテナを収納場所とするため、郊外に展開しているケースが多く、比較的安価です。屋内型に比べスペースが広く、バイクなど大きなものでも収納できる場所もあります。
屋内型トランクルーム
空調管理やセキュリティ管理がしっかりしているため、保管環境に注意が必要な品物でも安心して保管できます。街中や駅周辺に展開している店が多く、屋外型よりも費用は上がります。
宅配型トランクルーム
段ボール箱単位で荷物を預けられるサービスです。宅配業者に集荷してもらうだけで荷物を預けられ、取り出すときも依頼から数日で自宅に届きます。料金は1箱あたり月額数百円と低めで、保管環境も整っています。
倉庫とトランクルームの明確な違い
倉庫とトランクルームは、契約形態や収納物の管理者、管理方法に違いがあります。具体的な違いは以下のとおりです。
倉庫 | トランクルーム | |
契約 | 賃貸借契約 | 寄託契約 |
収納物の管理者 | 利用者 | 事業者 |
収納物の補償 | なし | あり |
荷物の出し入れ | 自由 | 事業者の立会いが必要 |
出し入れの手続き | 不要 | 必要 |
利用時間の制限 | なし | ある場合が多い |
倉庫のメリット・デメリット
荷物の保管場所を適切に選ぶには、双方のメリット・デメリットを把握してから判断するほうが安心です。ここからは、倉庫のメリットとデメリットを紹介します。
倉庫のメリット
倉庫を利用するメリットは、以下の5点が挙げられます。
- 大量の備品や保管物を収納できる
- 収納物の出し入れが自由で、立会いの必要がない
- 倉庫内で作業などをできる
- 契約内容によっては、内装変更などレイアウトの自由度が高い
- 倉庫を借りると、購入する場合と比較して初期投資が抑えられる
大きな機材を置くスペースが必要で、出し入れするタイミングが多い場合は、倉庫が適しているでしょう。
倉庫のデメリット
倉庫を利用するデメリットは、以下が挙げられます。
- 室外の場合もあり、保管に適した場所とは限らない
- 盗難被害にあっても補償されるとは限らない
- セキュリティ対策が不十分
- 契約時に保証人を求められる場合がある
貸倉庫は賃借契約のため、収納物の保管は自己責任です。不動産契約のように、契約時に保証人が必要なケースも多い傾向にあります。
トランクルームのメリット・デメリット
トランクルームのメリットやデメリットも見ていきましょう。
トランクルームのメリット
トランクルームを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 収納物の保管保障がある
- 預けられるサイズやプランの選択肢が豊富
- 荷物に損害が生れば、補償してもらえる
- 鍵付き、監視カメラ付き、管理人の配置など盗難防止対策がされている
保管環境や補償面、セキュリティ面でのメリットが大きいでしょう。
トランクルームのデメリットは
利用するデメリットは、以下が挙げられます。
- 荷物の出し入れは、業者の立会いが必要
- 事前連絡を求める業者もいる
- 営業時間しか利用できないケースが多い
- 作業など長期滞在はできない
トランクルームは貸倉庫と違って、荷物を簡単に出し入れできないことには注意が必要です。
倉庫とトランクルームの費用相場は?
ここからは、倉庫とトランクルームを借りる際の費用相場を紹介します。
倉庫の費用相場
貸倉庫は、月額の利用料金以外に初期費用や保証金が発生します。賃料は、坪単価×坪数の計算式で求められます。坪単価は地価によって決まり、地方よりも都市部、郊外より駅付近の方が費用は上がるため、倉庫の立地を確認しましょう。
1坪は約0.5帖で、坪単価は4,000〜10,000円が目安です。たとえば坪単価が6,000円の場合、2坪(約4帖分)を借りると12,000円がかかります。
初期費用は、部屋の賃貸と同様に敷金や礼金が発生します。保証金と合算して賃料の3〜10ヵ月分はかかると見積もりましょう。
トランクルームの費用相場
トランクルームを利用する場合、使用料だけでなく初期費用や施設管理費、保証金がかかるケースがあります。トランクルームの使用料の費用相場は以下のとおりです。
屋外型トランクルーム
1帖あたり2,000〜8,000円が費用相場です。屋外であれば、保管環境が不十分なケースが多く、費用は下がります。
屋内型トランクルーム
1帖あたり3,000〜20,000円と屋外型トランクルームより一般的には高くなります。
宅配型トランクルーム
月額料金は預けている段ボールのサイズや個数によって変動し、一般的には段ボール1箱あたり月額250~500円が相場です。
箱代や取り出し料金が発生する業者もあるため、契約内容は確認しましょう。初期費用はかからないケースが多く、手軽に始めやすい点はメリットといえます。初期費用には事務手数料や鍵代が発生します。一般的には使用料の2〜4倍が費用相場です。
倉庫とトランクルーム、どちらを利用する?
ここからは、おすすめの利用例をもとに、倉庫とトランクルームどちらを利用したらよいか解説します。
倉庫がおすすめの人
保管したい荷物が多く、湿度や温度管理の必要ない場合は、倉庫がおすすめです。倉庫がおすすめの人は以下のとおりです。
大量の在庫や大きな荷物を預けたい
倉庫はコンテナなど屋外の大型施設が多く、スペースを広く確保できるため、大量の商品の在庫や大型の資材の保管が用途となります。大型家電や家具、バイクなど大きな荷物を預けることも可能です。
24時間気兼ねなく利用したい
倉庫はいつでも出入りが可能で、特定の日や時間帯に関係なく、自由に利用できます。急な荷物が必要になっても、迅速に必要な物資を運び出せます。災害時の備蓄品の保管にも役立ち、持ち出したい物資をすぐに取り出せ、緊急な災害への対応も可能です。
短期間で利用したい
運営会社によっては、最短1ヶ月での契約を受け付けている場合があります。不用品回収を待つ間や、事業所のリフォームや移転など、大きな荷物を短期間保管したければ倉庫は向いているでしょう。
トランクルームがおすすめの人
特に個人利用の場合は、トランクルームがおすすめです。利用例は以下が挙げられます。
季節物の収納スペースを確保したい
季節物とは夏のみ使用する扇風機や、冬にしか使わないコタツが挙げられます。空調設備が整っているトランクルームもあるため、家電などの故障・劣化を防ぎやすい状態での保管が可能です。衣替えの際に衣類を預けたり、アウトドア用品を収納したりなどにも利用できます。
引っ越しのときの荷物を保管したい引越しをする際、荷物を移動しなければならないのに収納スペースがなく、一時的に保管しなければならない場合もあるでしょう。また、住居の退去日に転居先の入居日が間に合わない状況でも、トランクルームは一時的に荷物を預けられるため、利便性が高いと言えます。ただし、トランクルームには最低利用期間が設定されている場合もあり、利用の際は確認しましょう。
趣味グッズやコレクションを保管したい
趣味グッズやコレクションの量が自宅の収納スペースだけでは足りなくなり、生活スペースが狭くなることもあるでしょう。トランクルームを書庫としての利用や、フィギュアなどの陳列も可能です。注意点は、トランクルームは一時的な利用に限られているため、利用可能な期間を確認しましょう。
少量の備品や書類、在庫品を保管したい
トランクルームは倉庫と比較して小規模なものが多く、収納できる荷物の大きさも限定されます。温度や湿度の管理ができており、清潔な場所なので、備品や書類などの管理に適しています。セキュリティ対策もしっかりしているため、商品の在庫品の保管場所としても有効活用できるでしょう。
まとめ
倉庫とトランクルームは、契約形態や荷物の管理者、収納物の補償内容などが異なります。倉庫とトランクルームにはそれぞれメリット・デメリットがあり、預ける荷物や用途に併せて契約する必要があります。施設の面積や設備環境などによって相場が異なるため、しっかり確認して倉庫やトランクルームを借りましょう。
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