新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、働き方は出社スタイルからテレワークや在宅勤務を取り入れるスタイルへと大きく変化しました。その影響により、オフィスの縮小や移転をする企業が現れ、オフィス以外に保管場所を作るニーズが高まったといえます。また、在宅勤務になった方は自宅に仕事スペースを確保するために、自宅以外に収納スペースを確保する必要が生じ、需要が高まりました。
トランクルーム事業を手掛ける株式会社キャラーズが発表した「トランクルーム市場調査」によると、調査を開始した2008年270億円であった市場規模は、2023年には750億円に大きく成長しているとのことです。都市部の地価高騰により、今後さらに市場規模は拡大する見込みです。
荷物の保管場所と聞くと、倉庫やトランクルームが思い浮かぶのではないでしょうか。同じ保管場所ではありますが、契約形態や補償面で大きく異なります。
この記事では、倉庫とトランクルームの違いについて、メリット・デメリットを比較しながら解説します。
倉庫とトランクルームの違い
倉庫とトランクルームは、契約形態や収納物の管理者、管理方法に違いがあります。具体的には、以下のとおりです。
倉庫 | トランクルーム | |
契約 | 賃貸借契約 | 寄託契約 |
収納物の管理 | 利用者が管理 | 事業者が管理 |
収納物の保証 | なし | あり |
荷物の出し入れ | 自由 | 事業者の立ち合いが必要 |
出し入れの手続き | 不要 | 必要 |
利用時間の制限 | なし | ある場合が多い |
以下で倉庫とトランクルームの概要を紹介します。
倉庫とは
倉庫は、不動産の賃貸契約の一つであり、場所を借りて、大型や大量の在庫品や備品を保管する際に利用されます。一般的には、個人よりも法人の利用が多く、軽作業場として利用する企業もあります。
なお、収納物の管理は、利用者の自己責任となります。盗難などの被害に遭った場合、補償は受けられないので、注意が必要です。
トランクルームとは
トランクルームとは、物品を預ける寄託契約のサービスです。倉庫業法に基づき、国土交通省に営業倉庫の登録をした事業者のみが契約できます。事業者には保管料を定めて、国土交通大臣に届け出をすることが義務付けられています。
トランクルームは、大きく「屋外型」「屋内型」「宅配型」の3種類に分けられます。
・屋外型トランクルーム
主にコンテナを収納場所とするため、郊外に展開しているケースが多く、比較的安価です。屋内型に比べスペースが広く、バイクなど大きなものでも収納できる場所もあります。
・屋内型トランクルーム
空調管理やセキュリティ管理がしっかりしているため、保管環境に注意が必要な品物でも安心して保管できます。街中や駅周辺に展開している店が多く、屋外型よりも費用は上がります。
・宅配型トランクルーム
段ボール箱単位で荷物を預けられるサービスです。集荷依頼で荷物を預けられ、取り出すときも依頼から数日で自宅に届きます。料金は1箱あたり月額数百円と低めで、保管環境も整っています。
倉庫のメリット・デメリット
荷物の保管場所を適切に選ぶには、双方のメリット・デメリットを把握してから判断するほうが安心です。ここからは、倉庫のメリットとデメリットを紹介します。
倉庫のメリットは?
倉庫を利用するメリットは、以下が挙げられます。
- 大量の備品や保管物を収納できる
- 収納物の出し入れが自由で、立会いの必要がない
- 倉庫内で作業などをできる
- 契約内容によっては、内装変更などレイアウトの自由度が高い
大きな機材を置くスペースが必要で、出し入れするタイミングが多い場合は、倉庫が適しているでしょう。
倉庫のデメリットは?
倉庫を利用するデメリットは、以下が挙げられます。
- 室外の場合もあり、保管に適した場所とは限らない
- 盗難被害にあっても補償はない
- セキュリティ面が不十分
- 契約時に保証人を求められる場合がある
貸倉庫は賃借契約のため、収納物の保管は自己責任です。不動産契約のように、契約時に保証人が必要なケースも多い傾向です。
トランクルームのメリット・デメリット
トランクルームのメリットやデメリットも見ていきましょう。
トランクルームのメリットは?
トランクルームを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 収納物の保管保障がある
- 段ボール箱単位から5畳など、預けられるサイズやプランの選択肢が豊富
- 荷物に損害が生れば、補償してもらえる
- 鍵付き、監視カメラ付き、管理人の配置など盗難防止対策がされている
保管環境や補償面、セキュリティ面でのメリットが大きいでしょう。
トランクルームのデメリットは?
利用するデメリットは、以下が挙げられます。
- 荷物の出し入れは、業者の立会いが必要
- 事前連絡を求める業者もいる
- 営業時間しか利用できないケースが多い
- 作業など長期滞在はできない
トランクルームは貸倉庫と違って、荷物を簡単に出し入れできないことには注意が必要です。
倉庫とトランクルームの費用相場は?
実際に、倉庫やトランクルームを利用したい方にとって、気になる点は費用でしょう。
ここからは、倉庫とトランクルームの費用相場を紹介します。
倉庫の費用相場
貸倉庫を利用すると、月額料金以外に初期費用や保証金が発生します。賃料は、坪単価×坪数です。坪単価は地価により決まるので、地方よりも都市部、郊外より駅付近のほうが費用は上がります。
1坪は約0.5帖で、坪単価は4,000~10,000円が目安です。例えば坪単価が6,000円の場合、3坪(約6帖分)を借りると18,000円がかかります。
初期費用は、部屋の賃貸と同様に敷金や礼金が発生します。保証金と合わせて賃料の3〜10ヵ月分はかかると想定しておきましょう。
トランクルームの費用相場
トランクルームを利用する場合も使用料以外に、初期費用や施設管理費、保証金がかかります。使用料の相場は以下のとおりです。
屋外型トランクルーム
1帖あたり2,000〜8,000円が相場です。屋外の場合は、郊外や保管環境の不十分なケースが多く、費用は下がります。
屋内型トランクルーム
1帖あたり3,000〜20,000円と屋外型より高くなる傾向にあります。
宅配型トランクルーム
段ボール1箱あたり月額250~500円が相場です。
箱代や取り出し料金が発生する業者もあります。初期費用はかからないケースが多く、手軽に始めやすいです。初期費用には、事務手数料や鍵代が発生します。使用料の2〜4倍発生すると想定しておきましょう。
倉庫とトランクルーム、どっちがおすすめ?
では、実際にどちらを利用するのが良いのでしょうか。ここからは、おすすめの利用例をもとに紹介します。
倉庫がおすすめの人
保管したい荷物が多く、湿度や温度管理の必要ない場合は、倉庫がおすすめです。利用例は以下が挙げられます。
- 大量の在庫や季節商品などの保管場所に使う
- 荷物の保管だけでなく軽作業をする
- 事務所にして内装をレイアウトしたい
- 24時間気兼ねなく利用したい
自由度高く利用したい方は、希望の広さに合った倉庫を借りるのが適しています。
トランクルームがおすすめの人
個人利用の場合は、トランクルームがおすすめです。利用例は以下が挙げられます。
- 季節物の衣類や使用頻度の少ないアウトドア用品などに、一時保管に利用する
- 引っ越し時の保管場所にする
- 趣味グッズやコレクションの保管場所がほしい
- 書籍の保管場所にする
- 少量の備品や書類、在庫品の保管場所に利用したい
プランや料金選択が豊富なトランクルームは、個人利用におすすめです。法人の場合も、少量で出し入れの頻度が高くない備品保管には適しているでしょう。
まとめ
保管したいものや量によって、適した保管場所が決まります。倉庫とトランクルームの利用目的や求める条件を整理し、希望にあったサービスを選択しましょう。
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