工場を倉庫などの別の用途に使う場合、用途変更の申請が必要になることがあります。申請の際には、状況に応じて必要書類が異なり、専門知識も必要です。建築士事務所に依頼するのが一般的ですが、依頼する前に全体的な手続きの流れを把握しておくと安心です。用途変更の申請をせずに建築物を利用すると、法違反となり、最悪の場合懲役刑になることもあります。
この記事では用途変更の概要や、どのような場合に申請が必要になるのか、申請の手続きの流れなどを解説します。
用途変更とは
用途変更とは、倉庫や工場を違う使い道に変える手続きです。用途変更の申請をせずに、別の用途での利用をすると、法令違反となります。用途変更が必要な理由は、倉庫や工場、店舗などその建物を使用する用途により安全面の基準が違うからです。建築基準法に則り安全に使用するため用途変更が必要です。また、申請時には建物の構造や設備、防火基準を満たしているかなどの部分でも審査があります。
工場の用途変更が必要な場合とは
工場の用途変更は、以下2つのケースにおいて申請が必要とされています。
- 建築基準法により定められた特殊建築物の場合
- 建築物の延べ床面積が200㎡を超える場合
詳しい条件を以下で解説します。
「特殊建築物」として使用する
元々工場として使っていたものを、特殊建築物として用途変更する際に申請が必要です。特殊建築物とは、以下に定められたもののことを指します。
『学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。』 |
逆に、事務所や住宅はその区分に含まれません。また、例外として変更後の使用用途が元々の用途に類似する場合は、特殊建築物に該当しても申請は不要です。
延べ床面積が200㎡を超える
建築物の延べ床面積が200㎡を超える場合は、建築確認申請が必要です。200㎡は、畳換算で約100〜138畳ほどの広さです。以前は、100㎡を超える場合に手続きが必要でしたが、2018年6月の建築基準法改正で、200㎡に緩和されました。これにより、200㎡以下の場合は申請が不要になりました。
ただし、用途変更が不要であっても、建築基準法を遵守する必要があります。耐震性能や耐火性能に問題があったり、老朽化により倒壊の恐れがあったりする場合、改修が必要になることがあります。申請の有無を確認するとともに、建築基準法に違反していないか確認しましょう。
工場の用途変更の申請方法
建築基準法により、用途変更の申請は建築士しかできません。そのため用途変更をしたい場合は、建築士に依頼する必要があります。建築士を自分で探すのが難しい場合は、工務店に依頼して、在籍している建築士への依頼も可能です。なお建築士に依頼すると、該当物件の調査と書類作成をしてもらえます。
工務店に依頼する場合の費用は、平均80〜200万円ほどです。大抵100万円を超えるため、事前に費用を準備しておきましょう。
申請には、建築図、設備図、構造図、確認申請図、構造計算書、確認済証、検査済証の書類が必要です。これらの書類も忘れないようにしましょう。
工場の用途変更の手続きの流れ
工場の用途変更を行うためには、検査済証または建築確認書が必要です。また、建築確認申請書、設計図書、工事計画書の3つの書類も必要です。これらの書類は、一級建築士に依頼することで作成してもらえます。
これらの書類と建物の資料を検査機関に提出すると、申請完了です。その後、検査機関から用途変更の確認済証が届きます。確認済証を取得後、用途変更の工事に着手できます。工事完了後は、工事完了届を行政機関に提出しなければなりません。
検査済証と建築確認書の違いは、建築物の完成時か着工前に発行されるかの違いです。検査済証は建築物の完成時に発行されるため、用途変更を行う際には、検査済証がない場合は建築物の調査依頼が必要となります。
検査済証が必要な場合
検査済証は、対象の建築物とその敷地が建築基準法関連規定に適合しているかの確認に必要な書類です。検査済証は、建築物の完成時に交付されます。
しかし、何らかの理由で検査済証がない物件もあります。その場合は、用途変更を行う前に、建築物の調査依頼が必要です。その調査依頼により、建築確認書を交付されると、検査済証の代わりに提出できます。
また検査済証を紛失した場合は、台帳記載事項証明による代用が可能です。
建築確認書が必要な場合
国土交通省規定のガイドラインに基づき、検査済証がない場合は、一級建築士または建築基準適合資格者による調査を依頼する必要があります。この場合、建築確認書に基づき調査を行うことで、検査済証と同等の報告書を発行することができます。
建築確認書は、建築予定の建造物が基準に合っているかの審査を受け、それを証明するためのものです。そのため、着工前に建築確認書は発行および交付されます。建築確認書がない場合は、復元図面を新しく作成してから、一級建築士または建築基準適合判定資格者による確認を行います。
用途変更の注意点
用途変更の申請が必要にもかかわらず、申請を行わなかった場合、罰則があります。
個人事業主の場合、確認を怠った場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。法人の場合は「100万円以下の罰金」です。
また、対象の建築物が技術的基準を満たしていない場合、個人事業主は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科せられます。法人は「1億円以下の罰金」となります。
まとめ
工場の用途変更は、用途変更後が特殊建築物の場合・床面積が200㎡を超える場合は、用途変更の申請が必要です。その際、検査済証が必要になるため、検査済証がない場合は、建築確認書が必要になります。
用途変更の申請を怠った場合、法違反とみなされ、懲役刑または罰金刑に処される可能性があります。専門知識がないために、気づかないうちに法違反を犯してしまうことのないよう、用途変更について正しく理解しておくことが大切です。
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