倉庫管理主任者とはなにをする人?業務内容や選任条件についても解説

営業倉庫を運用する際には、倉庫管理主任者を選任しなくてはいけません。この倉庫管理主任者とはどのような業務を担当する役職なのでしょうか。この記事では倉庫管理責任者の業務や選定条件、資格所得の方法について解説します。

倉庫管理主任者とは

倉庫管理主任者とは、倉庫の安全かつ適切な運営を管理する役割を担う国家資格です。2002年4月1日の倉庫業法改正施行に伴い設けられました。

倉庫管理主任者の役割

倉庫管理主任者の主な役割は、以下の3つです。

  • 火災や事故などの防止
  • 施設のメンテナンス
  • 運営管理の適正化

倉庫は一般的な家屋よりも建物が大きく、収納される物品量も大量です。そのため火災や事故のリスクが高く、厳しい安全管理と的確な運営が要求されます。また、倉庫管理主任者は現場での安全意識を高めるために、従業員への研修を実施する役割も担っています。

倉庫管理主任者の配置基準

倉庫業法では、原則的に倉庫1つにつき1人の倉庫管理主任者が必要です。ただし、以下の2つの例外があります。

  • 同一施設内の複数倉庫、または機能上一体化している倉庫
  • 同一営業所が直接管理する複数倉庫群

これらの複数倉庫は「1つの倉庫」として見なされ、配置基準も倉庫管理主任者1人で問題ありません。

倉庫管理主任者の業務

倉庫管理主任者の主な業務は、災害や事故に備えた安全対策管理と、倉庫の適正な運営です。倉庫管理主任者の役割とは、以下に4つの業務が定められています。

イ.倉庫における火災の防止その他倉庫の施設の管理に関すること

ロ.倉庫管理業務の適正な運営の確保に関すること

ハ.労働災害の防止に関すること

ニ 現場従業員の研修に関すること

出典:倉庫業法施行規則・第9条の2(倉庫管理主任者の業務)

倉庫の管理

倉庫管理主任者の業務の中で、最初に規定されている「イ.倉庫における火災の防止その他倉庫の施設の管理に関すること」は最重要項目です。これは「火災防止」と「施設管理」に大別できます。

 

火災防止

倉庫では可燃性の製品を多数保管しており、ほかにも紙・ダンボールといった燃えやすい資材が多量にあります。そのため、火災発生時に大規模化する危険性が高く、火気の徹底管理が必要です。

 

施設管理

倉庫管理主任者が管理する対象は、施設建物だけではなく敷地全体です。これには2つの観点からの管理を行います。

 

  • 安全上の管理:施設内照明や作業機器の破損修理など、安全設備の維持管理
  • 衛生上の管理:事務所・休憩所・トイレなどの衛生環境を清潔に維持管理

適正な運営

倉庫業法施行規則・第9条の2で、2番目に規定されている「ロ.倉庫管理業務の適正な運営の確保に関すること」の業務です。倉庫管理主任者が行う倉庫管理業務とは以下のようなものです。

  • 保管している物品・資材を適切に管理する義務
  • 倉庫内外の整理整頓に努め、気温・湿度を適切に維持し破損や盗難を防止
  • 荷票と物品の正確かつ適切な入出数量管理
  • 貨物の守秘義務

倉庫の料金設定や経営業務は、倉庫管理主任者の役割に含まれません。

労働災害の防止

倉庫管理主任者の3番目に重視される業務は「ハ.労働災害の防止に関すること」です。主に労働現場での安全管理がこれに該当し、作業ルールの明確化と徹底を実践し労働災害を防ぎます。

倉庫内では従業員の転倒や転落、フォークリフトの衝突や接触事故が発生しやすく、管理体制の整備は重要な任務です。

  • 倉庫内の整理整頓
  • 従業員同士の声かけによる明確な意思疎通と注意喚起を促進
  • フォークリフトの積載重量を守り、移動通路を決める

以上の倉庫内作業ルールを周知させ、事故防止を徹底します。

従業員の研修

4番目に規定されている業務は「ニ.現場従業員の研修に関すること」です。これは上記で解説した管理内容を、倉庫管理主任者だけが把握するのではなく、従業員全体に理解を促す業務です。

倉庫管理主任者は、作業ルールと管理項目、火災防止の重要性を従業員全体で共有するため、研修の企画と実施も担当します。これらに使用するマニュアル作成も担います。

倉庫管理主任者の選任条件

倉庫業者が倉庫管理主任者を選任する場合には、必要条件に合致した人材でなくてはいけません。この条件は以下のとおりです。

  • 一定基準以上の実務経験がある者。
  • 倉庫管理主任者講習を受講済みの者。

両方を満たしている必要はなく、どちらかに合致すれば選任可能です。

実務経験がある

倉庫管理主任者に要求される実務経験の基準は2種類あります。

  • 3年以上の実務経験を有する者。
  • 2年以上の指導監督的実務経験を有する者。

以上のどちらかを満たしていれば選任可能です。

また倉庫業法施行規則では、国土交通大臣が、上記に掲げる者と同等以上の知識及び能力を有すると認める者も、倉庫管理主任者の選任対象と定めています。

倉庫管理主任者講習を受ける

実務経験で条件を満たしていない場合でも「倉庫管理主任者講習会」を受講すれば選任が可能です。

倉庫管理主任者講習会は、国土交通大臣の定める倉庫管理に関する講習ではあるものの、取得できるのは国家資格ではなく、一般社団法人・日本倉庫協会の民間資格です。また、この講習に試験はなく、受講の修了をもって資格取得となります。

選任されない条件

選任条件を満たしていても、以下に該当する者は倉庫管理主任者に選任できません。

  • 1年以上の懲役または禁固の刑に処せられ、執行終了後から2年を経過していない者。
  • 倉庫業法第21条の規定による登録取消を受け、取消日から2年を経過していない者。
  • 申請者が法人だった場合、役員が前者2つの条件のどちらかに該当する者。

つまり、1年以上刑務所へ収監された前科がある、業者取消処分を受ける、などの状態から2年経過していない者は倉庫管理主任者の選任対象になりません。

まとめ

倉庫管理主任者について解説してきました。倉庫業の運営に必要な倉庫管理主任者の資格は、一定年数の実務を積むか講習を受けて修了すれば取得できます。

ただし、設備管理から人材の研修まで扱う業務範囲が広く、責任の重い役職でもあります。特に火災防止対策で担う業務ウェイトが大きく、倉庫の安全な運営には欠かせない資格といえるでしょう。

倉庫管理主任者になりたての人や、これから倉庫管理主任者を目指す人は、徹底した倉庫の防災・保守を行い、健全な倉庫管理を心がけてください。




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