貸倉庫の火災保険は、基本的に倉庫を所有するオーナーが加入することになっています。借りる場合は、所有者であるオーナーが火災保険に加入しているかどうか、しっかり確認することが必要です。
火災保険に加入していない貸倉庫では、損害時に大きなリスクを負うかもしれません。
この記事では、火災保険の概要や補償の範囲、保険金が下りないケースなどの注意点、火災保険に加えて加入することで、さらに手厚い補償が受けられる保険について詳しく解説します。
火災保険とは
火災保険とは、主に火災にあった際の損害を補償する保険です。また、火災に加えて落雷や破裂・爆発による損害も補償します。ここでは火災保険の詳細を解説します。
火災保険の対象
火災保険の対象は、補償の対象となる物です。
「建物」と「家財」の2種類の中から片方、または両方を選べます。
建物の火災保険は、主にオーナーが加入する保険です。
これは建物本体が対象で、建物に付いていて動かせない物を指します。具体的には、門や塀、物置や車庫などが挙げられます。
一方で家財の保険は、主に借主が加入するものです。
家財は建物内の備品が対象で、建物内にある商品や設備などが挙げられます。なお、自動車は家財ではないため注意しましょう。
建物と家財の両方を選ぶことで、上記すべてを補償対象にできます。
火災保険の補償内容
火災保険の補償内容は、火災をはじめ自然災害や事故などが対象です。
「火災のリスク」「自然災害のリスク」「事故等のリスク」があるので紹介します。
火災のリスク
火災による損害を補償
例:設備の漏電や引火性の高い原材料の出火など
自然災害のリスク
落雷・風災・水災による損害を補償
例:台風や竜巻、集中豪雨による被害など
事故等のリスク
水漏れや破裂・爆発などによる損害を補償
例:水道設備の故障やガス漏れが原因による爆発など
火災保険の自然災害による支払い保険金
年度 | 支払い保険金額 | 主な災害 |
2010年度 | 52億円 | |
2011年度 | 288億円 | 台風12号豪雨、平成23年7月新潟・福島豪雨 |
2012年度 | 218億円 | 平成24年7月九州北部豪雨 |
2013年度 | 202億円 | |
2014年度 | 220億円 | 広島土砂災害 |
2015年度 | 349億円 | 平成27年関東・東北豪雨 |
2016年度 | 146億円 | |
2017年度 | 249億円 | 平成29年九州北部豪雨 |
2018年度 | 1兆2,507億円 | 平成30年7月豪雨、台風21号豪雨、台風24号豪雨 |
2019年度 | 1兆596億円 | 台風15号豪雨、台風19号豪雨 |
参考:一般社団法人 日本損害保険協会「火災保険における保険金支払いと収支の状況等」より
火災保険が下りないケースとは
火災保険が下りないケースに注意しましょう。保険金が支払われないケースは火災保険の約款に「免責事項」として定められています。ここでは、具体的に4つのケースを紹介します。
地震・噴火・津波による損害の場合
火災保険では、地震・噴火・津波による損害は補償されません。これは、巨大な損害が発生する可能性が高く、発生時期や頻度を予測するのが難しいためです。しかし、地震・噴火・津波による損害は、地震保険で補償することができます。
故意または重大な過失の場合
故意または重大な過失による損害は、火災保険の免責事項に含まれています。例えば、タバコの不始末による火事や自らの放火などが挙げられます。故意または重大な過失に該当する場合は、保険金が支払われないため注意が必要です。また、保険金目当ての虚偽の申告は詐欺に該当するのでやめましょう。
自然災害の際に起きた紛失や窃盗の場合
自然災害の際に起きた紛失や窃盗は、火災保険の免責事項に含まれています。これは、自然災害との因果関係の証明が難しいためです。多くの火災保険には盗難補償が付帯されていますが、全てに盗難補償がついているとは限らないので、より手厚い補償を受けたい場合は、盗難保険への加入も検討しましょう。
戦争に関わる損害の場合
戦争や内乱による損害は、火災保険の免責事項に含まれています。これは、火災保険が、火災や落雷など、自然災害や事故によって発生した損害を補償する保険だからです。戦争や内乱は、自然災害や事故とは異なるため、火災保険の対象外となります。
火災保険でカバーできない範囲は別の保険で備えよう!
火災保険でカバーできない範囲は別の保険で備えましょう。加入することでさらに手厚い補償を受けられる、「盗難保険」「地震保険」の2つを紹介します。
盗難保険
商品などの家財が盗難にあった場合の補償をします。警察庁が発表した「令和2年の刑法犯に関する統計資料」によると、侵入窃盗件数は年間で約4万件発生しています。そのうち倉庫荒らしが約3,000件です。窃盗被害は年々減少傾向にありますが、被害に遭う可能性は十分考えられます。
リスクを軽減するためには盗難保険を検討しましょう。下記が年次ごとに発生した倉庫荒らしの件数です。
倉庫荒らしの件数
年次 | 認知件数 | 検挙人数 | 検挙人員 |
平成23年 | 7,930件 | 3,798件 | 1,414件 |
平成24年 | 7,308件 | 3,531件 | 1,299件 |
平成25年 | 6,346件 | 3,140件 | 1,142件 |
平成26年 | 6,617件 | 3,296件 | 954件 |
平成27年 | 5,997件 | 2,680件 | 863件 |
平成28年 | 6,363件 | 3,384件 | 828件 |
平成29年 | 5,487件 | 2,889件 | 824件 |
平成30年 | 4,999件 | 3,216件 | 819件 |
令和1年 | 4,684件 | 3,118件 | 708件 |
令和2年 | 3,669件 | 2,844件 | 637件 |
参考:警察庁「令和2年の刑法犯に関する統計資料」より
地震保険
火災保険では補償されない地震による火災・噴火・津波などによる損害を補償します。これは火災保険の加入が原則で、地震保険の単独での加入はできません。
内閣府が発表した「災害に係る民間保険・共済の現状・課題等について」によると、東日本大震災による被害で支払った保険金は約1.2兆円にのぼります。
災害に備える意識は年々高まっており、地震保険の加入件数は増加傾向にあります。万が一のために地震保険を検討してはいかがでしょうか。
まとめ
貸倉庫を借りる際、火災保険の必要性や概要、補償内容にについて解説しました。台風や豪雨などの自然災害は年々増加傾向にあります。「豪雨による浸水で設備が故障した」「台風で扉が破壊された」など、いつ危機が起こるかわかりません。
まずは、所有者であるオーナーに火災保険に加入しているかどうかを必ず確認し、どのような補償が受けられるか確認しましょう。また、不測の事態に備えるために、火災保険ではカバーできない保険の加入も検討してみてはいかがでしょうか。
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