倉庫の用途変更はできるの?具体的な申請方法や流れなどを解説

用途変更とは、建物の用途を変更する手続きのことです。例えば、もともと倉庫だった建物を改装して、カフェや飲食店などに変更する際には、用途変更が必要になる場合があります。

用途変更には、専門的な知識や法律、条例などの知識が必要となるため、建築士事務所に依頼するのが一般的です。しかし依頼する前に、どのような手続きが必要なのかを把握しておくことが大切です。

そこで本記事では、倉庫の用途変更の申請が必要なケースや、具体的な申請方法、注意点について解説します。

用途変更の申請が必要なケース

用途変更の申請が必要なケースは、以下の2点に当てはまる場合です。

  • 特殊建築物に変更する場合
  • 建物の面積が200㎡を超える場合

特殊建築物への変更かつ建物の面積が200㎡を超える場合は、用途変更の申請が必要です。片方しか満たしていない場合は、用途変更の申請は不要になります。それぞれの条件について詳しく解説します。

特殊建築物に変更する場合

1つ目の条件は、特殊建築物に変更する場合です。特殊建築物とは、不特定多数の利用が見込まれる用途の建物を指します。決まった人が利用する住宅や事務所とは違い、大きな事故・災害につながる危険性が高いため、建築基準法の適用が厳しくなります。

しかし、例外として類似の用途への変更の際は申請が不要です。なぜなら、建築基準法令-第137条の17で定められているからです。たとえば、博物館から図書館への変更や、ホテルから旅館への変更は類似の用途になるので、用途変更の申請が不要になります。

用途を変える面積が200㎡を超える場合

2つ目の条件は、用途を変える面積が200㎡を超える場合です。2019年(令和元年)の建築基準法の改正により、面積の要件が100㎡超えから200㎡超えに変更されました。200㎡の広さをわかりやすくたとえると、テニスコート195.63㎡(23.77m×8.23m)と同じぐらいです。200㎡を超えない場合は、用途変更の申請は不要になります。

用途変更の具体例

200㎡超えの倉庫からの変更を前提に、用途変更をする場合に申請が必要か、または不要かについて詳しく解説します。ここで紹介する事例は、下記の4パターンです。

  • 倉庫から工場にする場合
  • 倉庫から店舗やカフェにする場
  • 倉庫から住宅にする場合
  • 貸し倉庫から用途変更をする場合

倉庫から工場にする場合

倉庫から工場にする場合は用途変更の申請は不要ですが、工場の種類によっては申請が必要なケースもあります。たとえば、自動車修理工場は例外のため、申請が必要です。

また、申請が不要であっても、建築基準法や消防法の基準に適合が必要です。非常用照明装置の設置や消火器の設置などが定められているので注意しましょう。

倉庫から店舗やカフェにする場合

倉庫から店舗やカフェにする場合は特殊建築物に該当するため、用途変更の申請が必要です。特殊建築物の定義は、建築基準法の第2条第二号で定められています。

建築基準法第2条第二号

特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

建築基準法第2条第二号参考:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)

倉庫から住宅にする場合倉庫から住宅にする場合は、用途変更の申請が必要です。倉庫とは違って人が常駐するからです。人が住む場所なので高い安全性を確保する必要があり、その分審査も厳しくなります。また、工業専用地域にある倉庫を住宅に用途変更はできないため、土地の地域種別にも注意しましょう。しかしながら、古い倉庫は鉄道の沿線が主体のため、好立地の住まいが安価で手に入る可能性があります。床面積を広くとれて、ロフトなどを設けやすく、隠れ家のような住宅にできるので、掘り出し物が見つかるかもしれません。

貸し倉庫から用途変更をする場合

貸し倉庫の場合は、借主が貸主の許可なく用途変更はできません。貸し倉庫は賃貸物件であり、用法遵守義務によって契約で定められた使用用途を守るというルールがあります。つまり、貸主からの許可が必要になるので、倉庫を借りる前に確認しましょう。

また、契約の種類には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。普通借家契約は、契約期間が過ぎると原則として自動的に更新されますが、定期借家契約の場合は期間満了すると、原則として更新されません。しかし、双方の同意があれば再契約は可能なので、事前に確認しましょう。

用途変更の申請手続きの流れ

1.資料の確認
用途変更の申請には、検査済証や完成図書などの書類が必要となります。これらの書類が手元に残っているか確認しましょう。検査済証とは、新築した建物が建築基準法に適合していることを証明するものです。紛失した場合は、確認済証で代替可能です。

 

2.用途変更の申請
用途変更の申請を行うには、建築確認申請書・設計図書・工事計画書の作成が必要です。建築確認申請書は、一級建築士しか発行できません。施工実績などを参考に、建築士事務所を選びましょう。用途変更にかかる費用は、依頼する建築士や建物の規模によって異なりますが、一般的な相場は、80万円~200万円ほどです。作成した書類と建物の資料を検査機関に提出することで、工事の計画が建築基準法に適合するものかチェックされます。チェックに合格すると、検査機関から用途変更の確認済証が発行されます。

 

3.工事着工、完了検査
用途変更の確認済証を取得後に工事着工が可能です。工事完了後は、工事完了届を行政機関に提出します。

用途変更の注意点

用途変更の申請が必要であったにもかかわらず、申請をしなかった場合は、建築基準法違反になります。建物の所有者に対して、最大で懲役3年以下または300万以下の罰金が科せられるため、申請のし忘れがないようにしましょう。

まとめ

倉庫からの用途変更は可能です。特殊建築物への変更かつ建物の面積が200㎡を超える場合は検査機関に申請が必要になるので、忘れずに申請しましょう。用途変更の申請が必要であったにもかかわらず申請をしなかった場合は、建築基準法違反になります。

専門的な知識が乏しく、いつの間にか法律違反していたということは避けなければなりません。用途変更の申請有無にかかわらず、建築士事務所に相談するのが安全といえるでしょう。




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