倉庫業を開業する際、必要なものの一つに営業倉庫の登録があります。倉庫業を営むためには倉庫業法を守らなければなりません。倉庫業法には、国土交通省への届出を経て、登録することが義務付けられています。
この記事では倉庫業を始める際、倉庫業の登録に必要な手続きを解説します。必要な書類や登録時のポイントも解説しますので、これから倉庫業を営もうと思っている方は、参考にしてみてください。
倉庫業とは
倉庫業とは、依頼を受けて他者から荷物を預かり、適切に保管をして金銭を授受する業態を指します。倉庫では幅広いものを預かることが可能です。例えば農作物、食品や機械類の製造物、原油や天然ガスといった鉱業関連のものなどが、預かり可能なものに含まれます。そのほか、美術品や骨とう品、宝石などの財産も倉庫で保管可能です。
倉庫業の主な業務は保管以外に、検品や仕分けのほか、流通加工、ピッキングも行います。また倉庫にも普通倉庫、冷蔵倉庫、危険品倉庫などの種類があります。何を預かるかによって倉庫の種類は異なりますので、開業前に決めておきましょう。
倉庫業の登録について
倉庫業を行うためには、国土交通大臣に登録されなければなりません。営業倉庫として登録することで、初めて倉庫業を開始できます。反対に登録せず倉庫業を行った場合、法律で罰則が定められています。
また、営業倉庫には種類があり、保管物によってその種類が変わります。ここでは倉庫業の登録と種類について解説します。
営業倉庫として登録する
倉庫業を始める際には、まず営業倉庫として登録し認可を得ましょう。営業倉庫には倉庫業法が適用されるため、認可を受けなければ営業できません。
登録するためには、倉庫の施設が基準を満たしている必要があります。基準は保管物によって変わります。また、倉庫ごとに倉庫管理責任者を置くことも忘れてはなりません。倉庫管理責任者は倉庫の管理に必要な知識と技術を有していることが条件です。倉庫管理主任者講習を受講すれば、倉庫管理主任者の選任要件の一つを満たせます。
営業倉庫の種類
営業倉庫には普通倉庫・冷蔵倉庫・水面倉庫の3種類が存在しています。さらに普通倉庫の中にも1類・2類・3類があります。
冷蔵倉庫は生鮮品や冷凍食品などを、適温で保存するための倉庫です。水面倉庫は原木を水の中で管理する倉庫で、これらは普通倉庫とは異なります。
普通倉庫は1類・2類・3類のほかに、野積倉庫や貯蔵槽倉庫・危険品倉庫があります。いずれも保管する物品によって種類が変わりますが、普通倉庫の大半はさまざまな物品を扱える1類です。倉庫を登録するときは、何を保管するのかを考えて、分類しましょう。
無登録だと罰則がある
倉庫を登録しないまま貸し出しを行い金銭を授受すると、倉庫業法違反にあたり罰則があります。罰則内容は1年以下の懲役、または100万円以下の罰金、もしくはその両方を科せられます。倉庫業を営業するということは、他者の大切な物品を預かることです。必ず適切な環境を整えて、倉庫を登録しましょう。
倉庫業の登録に必要な書類
倉庫業の登録に必要な書類は数多くあります。この項では登録件数が最も多い、第1類倉庫の登録に必要な書類を紹介します。下記に紹介する書類以外にも、必要な書類もあるため、適宜状況に応じて準備をしてください。
倉庫業登録申請書
営業所の名前や取り扱う物の種類について記載する書類です。基本的な事項は倉庫業登録申請書にすべて記載します。各都道府県によって申請書は異なり、運輸局などのホームページからダウンロードできます。
倉庫明細書
倉庫の規模や所在地、構造の詳細を記載する書類です。必ず一棟ごとに作成し、トランクルームなどの付属設備についてもこの書類に記入します。倉庫明細書の記載内容は後で解説する図面書類と合致していなければなりません。
登記簿謄本・賃貸借契約書
土地・倉庫の不動産所有者の住所氏名、所在や大きさ、構造や地目などが記載されている登記簿謄本は原本が必要です。また、倉庫や土地が賃貸不動産である場合は、賃貸借契約書が必要です。
建築確認済証・完了検査済証
倉庫完成には、建築基準法に則った「建築確認」と「完了検査」をそれぞれクリアしなければいけません。これらのことを証明するのが、建築確認済証と完了検査済証です。
建築確認済証と完了検査済証はセットになっているので、どちらかが欠けるということはありません。また、こちら2つの書類は写しの提出で大丈夫です。
倉庫内および倉庫周辺の図
倉庫周辺の図は、どのような場所に倉庫が存在しているかを示すために添付します。市販の地図を添付しても構いません。
一方倉庫内の地図は自作する必要があります。必要なのは以下の図面です。
- 倉庫内の配置図
- 平面図
- 立面図
- 断面図
- 矩計図
配置図は、倉庫の敷地内にある全ての設備と施設について記載するものです。縮尺は原則1/300〜1/1200です。
平面図と立面図の縮尺は1/50〜1/200です。立面図は東西南北から見た書類が必要です。断面図は1/50の縮尺で表記し、東西と南北から見た書類を1枚ずつ添付することが求められます。
矩形図は建物の縦の断面図を指します。屋根や外壁、床などの構造を記載する箇所です。倉庫がどのようにして成り立っているかを示す重要な図面です。
施設設備基準別添付書類チェックリスト
申請する際に提出が求められる書類の一覧です。このチェックリストをもとに添付書類を準備しましょう。書類を提出するときには、チェックリストを一番上に置き、目次として提出します。
その他図面以外の書類
構造計算書、平均熱貫流率の計算書や、警備に関する書類がここに含まれます。中には会社の概要が書かれたパンフレットの提出を求められる場合もあります。倉庫に関する書類は全て提出するつもりで準備しましょう。
法人登記関係等書類
会社概要を示した書類です。会社の形式に合わせ、添付する書類が以下のように変わります。
- 既存法人:商業登記簿謄本
- 設立中の法人:設立趣意書および定款
- 株式会社:発行株式数、株式総数、1株の発行価額、無額面株式発行の場合、発行価額中資本に組み入れない額、各発起人の引受株式の種類と数、その払込年月日、募集株式の種類、数、引受状況、見込
- 有限会社:出資の履行時期、その他出資の状況、見込
- 個人:戸籍謄本、資産調書
宣誓書
取締役、監査役全員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書を記載します。欠格事由とは役員が過去2年のうちに違反や法を犯しているかを示す項目です。欠格事由に該当した場合、倉庫業登録はできません。
倉庫管理主任者関係書類
倉庫の管理主任者を明記した書類です。倉庫管理主任者になる条件は以下のいずれかに該当する人材です。
- 2年以上の指導監督的実務経験がある者
- 3年以上の実務経験がある者
- 講習を修了した者
建具表等
建具の材質、寸法、防犯防鼠防水などが描かれた仕様書です。建具の位置や構造などを記します。主に窓やドア、電灯の箇所や仕様を記してください。
倉庫寄託約款
倉庫業者が利用者との間に行う、寄託契約に適用される契約内容を定めたものです。倉庫業者は倉庫寄託約款を定め、国土交通大臣に届け出なければなりません。
営業開始30日前までに届出が必要ですが、登録申請の際に添付しておけば、届出を省略できます。
倉庫業登録の基準と通過のポイント
倉庫業は、登録に必要な多数の書類を作成するだけでなく、さまざまな条件が存在するため、営業開始のハードルが高い業種です。
倉庫業法という法律で厳格な審査のもと成り立っているため、違反していないことが絶対条件です。ここからは、倉庫業法によって取り決められている3つの基準と、立地における注意点について紹介します。
申請者の欠格事由
欠格事由とは、倉庫を登録できない理由です。倉庫が以下の事由に当てはまると、登録できません。
- 申請者が1年以上の懲役、禁固刑となってから執行が完了した日から2年を過ぎていない刑罰に関する欠格事由がある
- 申請者が倉庫業法違反をして、登録の取り消しをされてから2年が経過していない
- 申請者が法人の場合、取締役などの役員がこれらに当てはまる
申請者や役員には、必ず欠格事由に当てはまらない人材を選任しましょう。
営業倉庫の施設設備
営業倉庫の施設設備が国土交通省の定める基準に達していないと、欠格事由に当てはまり、登録が不可となります。以下の基準をすべて満たす施設設備を選びましょう。
- 使用権原
- 関係法令適合性
- 土地定着性等
- 外壁、床の強度
- 防水性能
- 防湿性能
- 遮熱性能
- 耐火性能
- 災害防止措置
- 防火区画
- 消火設備
- 防犯措置
- 防鼠措置
- 防護措置
- 屋上床強度等
- 水面防護措置
- 流出防止措置
- 周壁底面強度
- 通報設備
- 冷蔵設備
- 温度計等
倉庫業法第6条第1項第4号に記載があるため、倉庫業を始める前に確認しておきましょう。
倉庫管理主任者
倉庫管理主任者は、適切に倉庫を管理するスキルや知識を有している人です。倉庫業には、営業倉庫の登録以外に、倉庫管理主任者の選任も定められています。
倉庫管理主任者は、一定以上の実務経験があるか、もしくは講習を受けて認定された人が選ばれます。実務経験は、倉庫管理業務に携わって3年、指導や監督業務を2年行っていれば、倉庫管理主任者の資格が得られます。実務経験がない場合は、倉庫管理主任者講習を受けましょう。講習は全国で行われています。
まとめ
この記事では、倉庫業登録に必要な書類や扱う倉庫の種類、申請までに必要な準備を解説しました。
倉庫業は公共インフラとして扱われ、申請には高いハードルが存在します。登録に必要な書類や知っておくべき法律が膨大なため、個人で行う場合は非常に手間と時間がかかります。
登録の際は、法律相談所などを介して行うと円滑に手続きが進みます。
ぜひこの記事を参考にして、倉庫業登録に役立ててください。
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