倉庫移転で大切なポイントとは?移転にかかる費用やタスク、スケジュールも合わせて解説

倉庫移転の際は、事前に費用の見積もりや余裕のあるスケジュール確保が必要です。この記事では、さまざまなタスクが同時進行する倉庫移転の概要と、移転時に役立つポイントを解説します。

物流倉庫移転を考えるのはどういう時?

事業規模の拡大により、在庫保管場所や十分な作業スペースが足りなくなることがあります。「現倉庫の使い勝手の悪さ」や「保管スペースの手狭さ」などの問題により、作業効率が下がる場合は、倉庫移転を検討しましょう。

十分な作業スペースが確保されていないと、スタッフにストレスがかかり、作業中のミスにもつながります。

倉庫移転は、顧客へのスムーズな商品提供を可能にするための必要策です。物流サービスに支障をきたさないためにも、事業拡大に伴った倉庫を確保しましょう。

初めての倉庫移転でやるべきこと

まずは移転の基本的な計画を立てます。移転の流れを決めるプランニングは、重要なので、妥協せずに進めましょう。将来的な売上比率を想定して、新倉庫で扱う荷量を見積もります。ここからは、倉庫移転の詳細を解説します。

移転完了時を想定し、逆算してスケジュールを立てる

移転先の決定から移転完了まで、最低でも3か月はかかります。その間も契約に時間がかかるなど、トラブルが発生することも少なくありません。

トラブルを防ぐためには、大まかな概算スケジュールを立て、細かくタイムテーブル化する必要があります。作成する際は、余裕をもったスケジュールを立てましょう。

タスクの役割分担を明確にする

新倉庫の稼働までには多くの作業が生じます。まず新しい物流委託先との連携が重要になるため、以下の作業タスクを明確化することが、スムーズな移転を進めるカギとなります。

  1. 自社でやるべきこと
  2. 新しい物流委託先がやるべきこと
  3. 新しい物流委託先と自社が共々やるべきこと

 

倉庫移転を始める時に押さえておくべきポイント

倉庫移転を始める際には、移転先倉庫とのデータ連携や物流関係各所との情報共有など、押さえておくべきいくつかのポイントが存在します。ここでは事前に行っておきたい、移転前の業務フローを解説します。

移転先倉庫とのデータ連携は早めに行う

新倉庫とのデータ連携は、移転準備でもっとも時間を費やす作業でしょう。特に重要なのは、移転先倉庫が運営する倉庫管理システム(WMS)との連携です。

WMSとは
Warehouse Management System の略であるWMSは、ロケーション管理や在庫の変動、納品書の作成など倉庫で行われる業務管理を意味します。WMSによって、業務の生産性向上やコストの削減を行い、在庫管理に効率性を持たせます。

WMSとの連携は、商品を正しく届けるための大変重要な作業です。連携において、システムの改修が必要になるため、利用システムの仕様についてなどの確認は早めに行いましょう。

業務フローが変わる可能性を考える

物流委託会社は外部の会社であるため、旧倉庫での進め方を移転先の倉庫へシフトできるとは限りません。

移転先での部署情報や、担当者の業務内容を前もって把握し、移転先倉庫システムのテストを行うと良いでしょう。これが業務の流れや運用ルール変更の備えになります。以下は、移転前と移転後の業務フローにおいての変更例です。

移転前 移転後
記憶に頼る、熟練アルバイトがピッキングしている 棚番号を付けるなど、商品マスタを整備。容易に正しいピッキングができるようにする
口頭の指示によってチラシの梱包作業が行われている 出荷データを基に個別にチラシの梱包作業の指示をだす

 

このように倉庫移転を機会に、今まで不便であった社内ルールを明確化することで、品質アップやコストカットにつながります。

情報連携はスムーズに行う

倉庫移転は、現在の物流委託先はもとより、物流関係各所や受注担当やコールセンター部門などとの連携といった、あらゆる関係各所との情報共有が大切です。

例えば、情報共有が不足して起きた問題として「ケース商品をバラで入庫するためには、本社と物流部門間での確認がまず必要であった」という事例があります。このような事態を、移転プロジェクトの進行中に起こさせないことが肝心です。

貸倉庫の移転にはどのくらいの費用がかかる?

大量の商品が物流倉庫には保管されているため、倉庫移転は物理的にも大きな費用がかかる作業です。そして、倉庫移転は業種・事業規模・内装それぞれの案件によって費用も違うため、相場というものがありません。ここでは倉庫移転時にかかる費用を紹介します。

商品などの移転にかかる費用

旧倉庫から新倉庫への商品移転は、順々に移動できます。トラックの料金は、以下が相場です。

5トン以下のトラック1台
10Km以内で8660円。有料道路を使用するとプラス2,040円で合計10,700円

廃棄費用

退去をする際には、廃棄費用がかかります。移転先へ移動できないオフィス家具などの廃棄料金は、都内の買取業者の場合、以下が相場になります。

  • 軽トラック 3万円
  • 2トントラック 7万円
  • 4トントラック 12万円

原状回復費用

移転前の賃貸倉庫で、倉庫に造作等を行っている場合、倉庫の原状回復が必要になります。床のひび割れ等の修理や、中二階を設けた場合の原状回復など、金額は工事の内容によってまちまちです。事業用の倉庫で、10年以上の賃貸を行っているのであれば、数十万の費用はかかることを覚悟してください。

移転先の内外装費用

移転先の内外装費用についても計算に入れておきましょう。移転予定の倉庫に、造作工事をどこまで行うかは借主次第になります。造作工事の正確な金額は、業者に確認してもらい、見積もりを出してもらう必要があります。

契約金

新しい物件の契約には、契約金が必要です。契約に必要な主な支払いは以下になります。

保証金又は敷金
保証金と敷金は同じ意味合いです。契約時に、貸主に預けてあったこれらの金額は、物件の解約時に貸主に返金されます。修繕費用として、保証金又は敷金から修繕にかかった金額が差し引かれる場合もあります。また、償却や敷引きといった、自動的に解約時に差し引かれる金額もあります。物件によって異なりますが、保証金、敷金の金額は賃料の2?6か月程度です。

礼金
礼金は、契約時に借主に謝礼金として払うもので、解約時に戻って来ない支払いになります。賃料の1~2か月分を支払うケースがほとんどです。

仲介手数料
仲介業者に、重要事項の説明を受けた後、支払う手数料を指します。業者は、賃貸の1か月分までを報酬の上限とします。

前家賃
入居月の賃料を先に支払うことを、前家賃と言います。一般の賃貸物件の場合で言うと、翌月の賃貸料を前月末日までに支払うことと、同じ理屈です。

保証委託料
保証委託料とは保証会社の利用料のことです。一般的に、事業用物件の契約時に保証会社を利用します。保証会社の役割とは、賃貸の滞納保証や撤去の際のトラブルにおいての、弁護士費用を貸主の代わりに賄うことなどです。保証会社ごとに保証委託料は異なるため、契約前に仲介会社との保証委託料の確認が大切です。

火災保険料
火災保険は、賃貸物件を借りる際に借主側に加入してもらいます。倉庫所有者側でも火災保険は加入しているものです。一方、倉庫の貸出期間のトラブルは、借主の責任になるので、借家人賠償付きの保険加入が必要になります。

倉庫移転のタスクとスケジュール

移転時期の想定をざっくりと置いてから、逆算して大まかなスケジュールを決めると良いでしょう。移転先が決まらないと、正確なスケジュールは固まりません。はじめは後で変更してもいいように、大まかに決めておくことが大切です。

稼働日の3か月前までにすること

倉庫移転の3か月前までに、移転先の倉庫との委託契約を結び、今まで使用していた倉庫の委託解約を済ませます。その後、現状の課題の分析を行い、新倉庫の運用に向けた計画を立てましょう。

稼働日の2か月前までにすること

まず移転を行う在庫量を把握し、移転費用を見積もります。必要なトラック数や段ボールの箱数などの情報をもとに、新委託先から移転日程や梱包指示などの見積もりを出してもらい、現倉庫と移転先とのスケジュールを決めましょう。

稼働日の1か月前までにすること

倉庫移転の準備は、タイムスケジュールとWMS連携テストが重要です。タイムスケジュールは、見積もり時のスケジュールよりもさらに細かく作成しましょう。また、移転期間は出荷業務ができませんので、停止期間の受注量と消化期間の見通しを立てておきましょう。

稼働日の1週間前までにすること

現倉庫での出荷を終了した後に、商品の棚卸と梱包の作業を行い、新倉庫へと移転します。新倉庫でも棚卸を行い、搬出時の在庫と搬出後の棚卸の結果が一致していれば、倉庫移転は完了です。

まとめ

物流は、商品販売の心臓部です。そのため倉庫移転において物流を長期間止めることは、大きな機会損失になります。留意点が数多くある物流倉庫の移転を計画的に進めるためには、委託先である物流会社との情報共有と、相互協力が重要です。
現在の倉庫におけるオペレーション上での課題を洗い出し、新倉庫における在庫保管体制を見直すことが、新倉庫での円滑な運営につながります。この記事で紹介したポイントを参考にして、倉庫移転の計画を立て直してみてはいかがでしょうか。




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