工場移転の流れとは?新工場の契約から旧工場の退去まで詳しく解説

事業の拡大や新設備の導入、老朽化などをきっかけに、工場移転を検討中の方はいませんか。工場移転は頻繁に発生するものではなく、社内にはノウハウのないケースがほとんどでしょう。この記事では、工場移転の全体的な流れから注意点まで詳しく解説します。

工場移転の全体的な流れ

工場の移転には、新工場の契約や引っ越し作業、旧工場の退去などを同時並行で進める必要があります。ここでは工場移転の大まかな流れを5つのプロセスに分けて解説します。

新工場の契約

工場を移転するときは、まず移転の理由や目的を明確にしましょう。目的が定まっていないと、移転計画が曖昧になり、トラブルや中途半端な結果につながる恐れがあります。現状の課題を洗い出し、新しい工場のレイアウトを検討するなど、移転後のメリットを最大限に引き出すために、綿密な計画を立てましょう。

移転先は、利便性や通勤のしやすさなど、業務の生産性に影響する要素を総合的に検討して選びましょう。高速道路や鉄道などの交通機関のアクセス、工場までの道幅や取引先との距離など、具体的な条件を整理して、候補を絞り込みましょう。また、工場周辺の環境にも配慮が必要です。作業音や騒音、排気ガスなどが周辺住民に迷惑をかけないように、事前に確認しておきましょう。

旧工場の退去

退去前に、貸主と打ち合わせを行いましょう。貸主との打ち合わせによって、借主との意見相違によるトラブルを未然に防ぐことが可能です。トラブルの原因になりやすい原状回復業者に関することや、原状回復工事の範囲など相違がないよう貸主と念入りに意識合わせをしましょう。なお原状回復費用について、事業用不動産に分類される工場は、自然損耗かどうか関係なく原則貸主負担が一般的です。

賃貸借契約書に基づき、解約予告を行いましょう。一般的には、3~6ヶ月前までに解約予告を行う必要があります。解約予告を怠ると、違約金が発生する可能性があります。

原状回復業者は、工事の納期や実績などを考慮して選びましょう。納期を守れないと、貸主から損害賠償を請求される可能性があります。また、次の借主が決まっている場合は、次の借主にも迷惑がかかるため、スピーディーに対応できる業者を選ぶことが大切です。

新工場の設備工事

移転先工場における設備の確認では、既存の設備のままで問題ないか、新しく工事が必要かを判断するうえで重要です。電気容量を変更する必要があれば電気工事を、床荷重が足りなければ床の補強工事をしなければなりません。移転前に確認できれば、工場の設備や機械を移動する手間を省けるため、スムーズに工事が行えます。

設備の確認が終わったら、内装業者の選定と依頼を実施します。間仕切りや通信ケーブルの配線、電気関係の配線などを専門の業者に依頼しましょう。たとえば、内装工事業者や通信機器に関する業者、機械設備関係の業者などが挙げられます。工場の中での作業になるため、業者間で作業時間と場所がかぶらないようにスケジュール調整に注意してください。

引っ越し作業

引っ越し業者を選ぶときは、複数の業者から相見積もりを取りましょう。同じ条件で比較することで、適正な価格かどうかを判断しやすくなります。また、対応の速さや丁寧さなども確認し、信頼できる業者を選びましょう。万が一のトラブルに備えて、アフターサービスや保証が充実している業者を選ぶのもおすすめです。

引っ越し業者との打ち合わせでは、以下の点を確認しましょう。

  • 運搬の経路
  • 梱包の方法
  • 運搬先

引っ越し当日の作業をスムーズに行うために、段取りを決めておきましょう。また、移転先で希望のレイアウト通りにできるか確認し、引っ越しのマニュアルを作成しておくと安心です。

お知らせの準備

工場移転のお知らせは、取引先や顧客に必ず伝えましょう。

会社案内やパンフレット、ホームページなどの情報を更新し、新しい住所や電話番号、営業開始日を記載してください。情報の更新が遅れると、取引先や顧客に混乱を招く恐れがあります。

円滑な移転を進めるためにも、早めに準備を進めましょう。

工場移転する際の注意点

移転時の注意点を3つ紹介します。トラブル回避のためにもぜひご参照ください。

従業員への対応

工場移転は、従業員の労働環境と通勤時間に大きな影響を与えます。そのため、従業員の理解と協力を得ることが重要です。

退職者が続出すると、生産性や事業活動そのものに支障をきたす可能性があります。労働環境の改善や給与の増額など、従業員の不安を取り除くための対策を講じましょう。

信頼できる業者選び

工場移転には、原状回復工事や引っ越しなど、さまざまな業者が関わります。納期に遅れると、業務や取引先への影響が大きくなります。そのため、信頼できる業者を選ぶことが大切です。

見積もり依頼の際には、営業担当の対応や実績などを参考に、慎重に選びましょう。

余裕のあるスケジュール設定

業者間で連携が必要な場合や、作業の順序が決まっている場合、前の作業が遅れると、次の作業にも影響が及ぶ可能性があります。そのため、余裕のあるスケジュールを設定しておくことが大切です。

仮に前の作業が遅れたとしても、次の作業に与える影響を最小限に抑えられます。

工場移転で使える税制優遇や補助金制度

工場を移転する際、国や地方自治体から税制優遇や補助金を受けられる場合があります。制度を活用することで、移転にかかる費用を抑えられます。

具体的には、経済産業省の設備投資促進税制では、機械や建物の取得費用を減税することが可能です。例えば、和歌山県では、工場を新設する際の奨励金を支給しています(2023年時点)。最新情報や詳細については、各自治体のホームページで確認してみましょう。

まとめ

この記事では、工場移転の全体的な流れから注意点について解説しました。新工場の契約や引っ越し作業、旧工場の退去などを同時並行で進める必要があります。余裕のあるスケジュール設定をして、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

工場移転には多くの方の協力が不可欠です。引っ越しを依頼する専門業者はもちろん、従業員とも協力して工場移転を成功させましょう。




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