企業が運営する倉庫では、さまざまな製品の製造や保管が行われています。顧客に届ける商品を万全な状態にするため、日々の品質管理は非常に重要です。そうした倉庫において、鳩による被害が後を絶ちません。
倉庫に鳩がいると、倉庫内や商品が鳩の糞まみれになる・従業員に健康被害が出る・鳩が飛来し安心して働けないなどのリスクがあります。また、糞が商品に付着した状態で梱包してしまうと、営業停止処分にまで発展するかもしれません。
この記事では、鳩が倉庫に与える具体的な被害を解説します。さらに、被害に遭わないための対策や、鳩を追い出す際の注意点についても説明しているので、参考にしていただけると幸いです。
鳩の生態について
公園や駅などに数多くいる鳩は、人にとって身近な鳥のひとつです。餌をついばむ姿を見て温厚な性格だと思う人もいますが、実際そうではありません。まずは鳩がどのような鳥なのかを知り、適切な方法で対処できるようにしましょう。
鳩はどのような鳥なのか
鳩は数羽から数十羽で群れを作り、おとなしいイメージとは逆に、縄張り意識が強く凶暴です。人や他の鳩が縄張りに入ると攻撃します。では、なぜ公園や駅に鳩がいるのでしょうか。それは、鳩にとって餌を得るのに最適な場所だからです。
鳩の自然の餌は、植物の種子・穀物・豆類ですが、人間の生活圏にはパンくずやお菓子のかけらなどがたくさん落ちています。鳩は雑食性で、水飲み場も多いことから、これらの場所は理想的な生息環境と言えます。
さらに、鳩は帰巣本能が高く、営巣した場所から簡単には追い払えません。無理に追い払おうとすると、凶暴性を出して反撃する可能性があり、非常に危険です。
鳩が与える被害
鳩が営巣することで人間の生活圏にさまざまな被害を与えます。その代表的な被害は以下のとおりです。
糞害
鳩は白い糞を排泄し、群れで生活するため、その周辺は糞で汚れてしまいます。倉庫内の物品に糞が付着すると傷みの原因になります。
食害
鳩は人が撒いた穀物や野菜の種も土から取り出して食べてしまいます。豆類や麦類、稲、飼料作物、野菜など多岐にわたり、主に播種期(はしゅき)の種子に対する被害が甚大です。農林水産省が行った令和4年度の統計によると、最も被害が大きいのは豆類で、被害面積の40%、被害金額の29%を占めています。また、被害量では麦類が32%と最も被害が多いようです。
騒音
鳩の鳴き声は低く大きいため、周囲に響きます。鳴く理由は、「縄張りの主張」「オスからメスへの求愛」「営巣に適した場所を知らせる」の3つです。鳩は昼に活動し、夜は寝ます。朝方は特に鳴き声が響きやすく、騒がしく感じます。
ダニや雑菌
鳩にはダニやノミ、雑菌が多数付着しています。非常に不衛生なので、落ちた羽などは直接手で触らず、ホウキで取り除くようにしましょう。ノミやダニに刺されると皮膚炎やかゆみを引き起こし、アレルギー性鼻炎や気管支喘息の原因にもなります。
感染症や食中毒
乾燥した鳩の糞が空気中に飛散し、以下の病気を引き起こす可能性があります。
- サルモネラ中毒:発熱、腹痛、下痢
- クリプトコッカス病:皮膚炎から脳炎、髄膜炎
- オウム病:風邪や肺炎のような症状
- ニューカッスル病:急性類粒結膜炎
- ヒストプラズマ症:肺結核のような症状
鳩が倉庫に侵入するまでの行動
巣を作れそうな建物を見つけたときの鳩には行動パターンがあります。安全で居心地がいいかを確認するため、まず近隣の建物や電線にとまって様子をみるのです。
外敵がいないから近づけそうだと判断しても、すぐ中に入ろうとはしません。何かあってもすぐに逃げられるよう、外に近いシャッターボックスなどに待機し、倉庫内を観察します。そうして安全を確認しながら、少しづつ倉庫内部に侵入してきます。
鳩による被害が起きやすい場所
倉庫内でも特に鳩が好み、被害に遭いやすい場所があります。ここでは、「シャッターボックス上部」「トラックの作業スペース」「倉庫内部の高所」「屋上」の4か所について解説します。
シャッターボックス上部
出入口のシャッターボックス上部は、位置が高く中の様子を確認しやすい場所です。鳩は危険があればすぐに逃げられるため、ここを好みます。広くて平らなところは鳥が待機しやすいので、営巣しやすく被害が多くなりがちです。
トラックの作業スペース
大型トラックが通る車路や商品を搬入・搬出するトラックバースは、鳩が侵入しやすい場所です。多くの商品を扱うため、鳩による被害を早急に解決する必要があります。
倉庫内部の高所
倉庫内部は天井が高く、H形鋼の梁が縦横に張り巡らされています。鳩が羽を休めたり営巣したりしやすい場所です。ケーブルラックや配管ダクトの上も、よく被害に遭う場所です。
屋上
鳩は高いところから周囲を見渡して安全を確認します。そのため、倉庫の屋上は営巣の候補地となりやすいです。人間もほとんど来ないので、屋上に営巣されることがあります。
鳩を倉庫から追い出す有効的な対策
では鳩を倉庫から追い出すためには、どのような対策が有効なのでしょうか。前述した被害に遭いやすい場所ごとに解説します。
シャッターボックス上部
鳩が侵入できないようにするため、シャッターボックスの上部にバードピンを敷き詰めると良いでしょう。バードピンには、鳥を傷つけない形状や、美観を損ねないデザインのものもあります。鳩を寄せ付けなければ、倉庫の劣化も防げます。
トラックの作業スペース
鳩がトラックの作業スペースに侵入しないよう、バードネットを設置するのが一般的な対策です。倉庫の設計時点でバードネットの設置を組み込むと、高い効果を発揮します。また、パラペットなどに電気ショックを設置する方法もあります。飛来した鳩に高電圧の刺激を与え、危険な場所であることを学習させることが可能です。
倉庫内部の高所
倉庫の天井にあるH形鋼の梁やケーブルラック、配管ダクトの上にも、バードピンやバードネットが有効です。さらに、鳩に不快感を与える成分が含まれたバードジェルを塗布することも効果があります。高所での作業は非常に危険ですので、プロに依頼することをおすすめします。
屋上
屋上の場合、外周に鳩をとまらせないようにするのが重要です。特に鳩は外周にとまれないと安全確認ができなくなります。長い距離には、バードワイヤーを使用するとコストパフォーマンスが高くなります。雨風に耐える強度の高いものを選びましょう。また、予算があれば微弱な電気ショックを併用することで、より効果的です。
鳩を倉庫から追い出す際の注意点
ここまで鳩に営巣させないための方法を解説しましたが、住みついてしまったときはどのように駆除すれば良いのでしょうか。鳩の駆除は危険が伴うだけではなく法律もかかわるので、作業の際は十分注意する必要があります。
鳥獣保護法を遵守する
日本には「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」があり、一般的には「鳥獣保護法」と呼ばれています。
これは、野生の哺乳類や鳥類に対する保護や狩猟に関する制度を定めた法律で、許可なしに鳥獣を殺傷することを禁止しています。鳩も野生の鳥類なので、この法律が適用され、むやみに駆除はできません。
鳥獣保護法の第8条では、「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲または採取してはならない」と定めています。卵がある巣を移動させたり、卵を採取したりすることも違反になります。鳩を駆除する際は、まずこの法律を理解してから作業を行いましょう。
鳩の巣だけを撤去する
鳥獣保護法に違反しないためには、巣に鳩や卵がないときを狙って撤去する必要があります。鳩が戻ってくる前に撤去し、改めて巣を作らせないように注意しましょう。
また自分で捕獲する場合は、地域の役所に連絡して捕獲許可を申請しなければなりません。許可が出るまでには約1~2週間かかります。駆除後の報告も必要です。
専門業者に依頼するのもおすすめ
予算に余裕がある方は、専門業者に依頼するのもおすすめです。鳩の駆除は申請手続きや危険を伴う作業なので、鳥獣捕獲許可を持っているプロに頼むと、迅速かつ安全に対処してもらえます。
まとめ
鳩が頻繁に倉庫周辺を飛んでいる場合は、営巣に適した場所がないかを確認しているのかもしれません。鳩をそのまま放置していると、糞害や騒音、健康被害を及ぼすかもしれません。
しかし、鳥獣保護法によって簡単には駆除できないので、被害が出る前にバードピンを設置するなど、鳩の侵入を防ぐ対策をしましょう。被害に遭ってしまった場合は、鳥獣保護法に違反しないよう慎重な撤去作業が求められます。鳩に襲われる危険性もあるため、自分ではできないと判断した場合は専門業者に相談しましょう。
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