倉庫にはシステム倉庫・プレハブ倉庫など、さまざまな種類があります。なかでもテント倉庫は短期間に低コストで建てられ、荷物の増減にも柔軟に対応できる点が長所です。また、一口にテント倉庫といっても、扱う業務規模や種類によって建て方は多種多様です。この記事では、テント倉庫の用途やメリット・デメリットを解説します。
テント倉庫とは
軽量金属の骨組みにテント生地のシートをかぶせて建てる倉庫です。単純な構造なので組立が早く、短期間の運用に向いています。また、シートを容易に取り外せるため、用途に応じて一部の開放や屋根の延長など、柔軟に対応可能です。
テント倉庫の種類
テント倉庫の種類はおおまかに「閉鎖式」「側面開放式」「伸縮式」「移動式」の4タイプがあります。
閉鎖式
倉庫全体をシートが覆っているタイプのテント倉庫です。主な用途として簡易な倉庫や作業場、スポーツの屋内練習場などに使用されます。
側面開放式
側面の一部、または側面すべてにシートがないタイプのテント倉庫です。荷物の出し入れが簡単で、内部に熱がこもりません。主にトラックへの荷物の積み下ろし作業や、雨よけの用途に使われます。通気性が良いので塗装作業の用途にも便利です。
伸縮式
伸縮式は蛇腹状のフレームをシートで覆う構造なので、自由に伸縮できます。使わないときはテント倉庫を折り畳み、コンパクトに収納が可能です。
移動式
骨組みの足元にキャスターが付いており、移動の簡単なテント倉庫です。下水管の工事など施工箇所が移動する場合には、現場に沿って資材の保管場所を変更できます。
テント倉庫を建てるには
テント倉庫の建設は以下の流れで進みます。
1.ヒアリング
建設業者が、施主から希望するテント倉庫の用途・大きさの聞き取りをします。 必要ならばオプションの要望も伝えておきましょう。
2.各種調査と見積もり
希望どおりのテント倉庫を建設できるか、実際の現場で確認します。ヒアリングと現場調査の結果から工事の見積もりを作成します。
3.契約
仮設計と見積もり内容を確認し、合意できれば契約成立です。施工前には建築確認申請など手続きが必要です。
4.基礎工事
建築確認申請の完了後は施工開始です。金属のフレームとテント生地のシートを作成し、現地の基礎工事も行います。
5.テント倉庫の建設
現地で金属部材の骨組みを建てシートを貼り、テント倉庫を建設します。
6.施工完了・引き渡し
工事完了後は指定確認検査機関の検査を受けないといけません。検査に合格したテント倉庫は施主へ引き渡されます。
テント倉庫のメリット
テント倉庫のメリットは、建設に係る時間やコストの低さ、柔軟な対応性が挙げられます。それぞれみていきましょう。
建設が早く施工費も安い
テント倉庫は構造がシンプルなため、施工期間は1.5~3ヵ月で済みます。一般的なシステム倉庫は建設期間に約6ヵ月~1年かかるため、非常に早く業務に使用できる点は大きなメリットです。
また、使用資材や組み立てる工程も少ないので、材料費や人件費の施工コストを軽減できます。例えば、500㎡で高さ5mのテント倉庫を建てる場合、相場は約2,000万円です。ほぼ同サイズで別種の倉庫を建設するには、システム建築なら4,000万円、プレハブでも3,000万円ほどかかります。
増設や移設が簡単
シンプルな構造のテント倉庫は、解体や増設も簡単です。骨組みとシートに分解すれば持ち運びしやすく、同規格の部品を付け足して増設するなど、業務内容に応じて柔軟な対応ができます。
建てる場所を選ばない
一般的に軟弱地盤と呼ばれる柔らかい土地に倉庫を建てるには、杭を打ち込む工事をしないといけません。しかしテント倉庫は軽量のため杭工事の必要がなく、コンクリートブロックの置き基礎仕様で建設可能です。
また、三角形やひし形といった変則的な敷地でも、形状に合わせて柔軟に設計できる点もメリットです。加えて、建物自体が軽いため地震の影響を受けにくい点も強みでしょう。
照明コストが低い
テント倉庫に使用されるシート素材は太陽光を透過させるため、日中は内部が明るくなります。天候の良い日は自然光で作業ができ、照明コストを低く抑えられるでしょう。
テント倉庫のデメリット
テント倉庫のデメリットには、シートの張替えや室内の温度調整が挙げられます。それぞれみていきましょう。
温度管理が難しい
テント倉庫に使用されるシート生地は、通常の壁材よりも断熱性が劣るので、外気温に倉庫内温度が大きく影響されます。そのため夏には暑く、冬では寒くなり、快適な温度管理が難しい環境です。
加えて、寒暖差が大きいせいで倉庫内に結露からカビが発生し、保存する物品にダメージを与えるリスクもあります。
テント倉庫では建物の構造的に空調設備を設置しづらいものの、ベンチレーター・シーリングファンで空気を循環させるといった対策が重要です。
耐用年数が短い
一般的な建築の倉庫では耐用年数が30年、プレハブ倉庫でも20年ほどとされています。一方でテント倉庫は骨組み部分が15年~20年、表面を覆うテント地シートは10年が耐用年数の目安と言われています。設置場所で以下の条件が厳しい環境では、さらに耐用年数が短くなるでしょう。こうした環境では定期的なメンテナンスが欠かせません。
紫外線
紫外線にさらされる時間が長いほど経年劣化は進みます。日当たりの良い場所は耐用年数が短くなるでしょう。
潮風
骨組み部分の鉄骨は潮風によって錆びやすくなります。海に近い場所は劣化が進みやすく、耐用年数の目安は5年ほどです。
自然災害
台風や積雪、地震などの自然災害が多い土地もテント表面の摩耗が早く、劣化しやすくなります。
テント地が痛みやすい
テント倉庫は外部を覆うテント生地シートがとくに痛みやすく、定期的なメンテナンスと張り替えが必要です。シートは骨組みよりも劣化が早いため、10年を目安に交換しましょう。経年劣化だけではなく、普段から摩擦や負荷の大きい箇所は破れやすくなります。布地を貼り重ねる補強や、修繕シールで裂け目を塞ぐなど、こまめな点検と管理が必要です。
防犯対策に不安がある
頑丈な外壁を持つシステム倉庫などと違い、テント倉庫の外壁は丈夫な布地でしかないので、刃物で切られるリスクがあります。倉庫内には商品在庫以外にも物流機器や専門的な資材・工具といった高価な物品が保管されているため、盗難にあった場合の被害額は少なくありません。
防犯対策には高性能な防犯カメラやセンサーライトなど、強固なセキュリティ体制が必要です。
まとめ
この記事では、テント倉庫の用途やメリット・デメリットを解説しました。低コストでスピーディーに建てられるテント倉庫は、使い勝手が良い倉庫です。目的や用途、予算をほかの倉庫と比較して自社に合う倉庫を選びましょう。
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