倉庫業法とは?制定目的から定義、押さえたいポイントまでを解説

倉庫の運営を行う企業にとっては、「倉庫業法」の法制度の理解は必須です。この記事では、倉庫業法の制定目的から定義、法律の押さえたいポイントを解説します。

そもそも倉庫業法とは?

倉庫業法が定める基準を満たし、国土交通大臣の登録を受けなければ倉庫を使用しての営業はできません。まずは倉庫業法の具体的な内容や、倉庫業を営むうえで必要な事項、注意点を解説します。

倉庫業法の概要

倉庫業法とは「営業倉庫」についての法律を定めたものです。

倉庫は自らの貨物を保管するための「自家倉庫」と、他人の貨物を保管するための「営業倉庫」の2種類に大別されます。このうち後者の「営業倉庫」についてのルールを定めたものが倉庫業法です。

倉庫業法の制定目的

倉庫業法では、トラブルの抑制や対物利用者の利益保護のために、細かな規定が定められています。具体的な目的としては、倉庫業法の第1章・第1条に、以下のように示されています。

(目的)

第一条 この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉荷証券の円滑な流通を確保することを目的とする。

引用:e-Gov法令検索、倉庫業法

登録の内容

営業倉庫は、自家倉庫よりも厳しい基準を満たしたうえで国土交通大臣に申請をし、倉庫業者として事前に登録することが必要です。営業倉庫としての登録には、以下の申請をしなければなりません。

  • 所有者氏名/住所
  • 倉庫の所在地
  • 倉庫の種類
  • 保管する物品の種類
  • 倉庫の設備

また、営業倉庫として認められるには、建設・設備基準を遵守し、倉庫管理主任者を選任する必要があります。

倉庫業法の対象

倉庫業法を遵守しなければならない対象者は、以下のとおりです。

  • 営業倉庫として登録済みの業者
  • 営業倉庫を運営しようとする者
  • 倉庫業に近い業態を営む者

事業として倉庫業を運営する場合は、登録が必要です。トランクルームなどの貸倉庫業も、倉庫業法の規制対象となります。

罰則について

倉庫業法に違反すると、以下のような罰則が科されます。

  • 登録を受けずに倉庫業を営業した場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 他人の倉庫業のために名義を貸した場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 営業停止命令に従わなかった場合:6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

罰則規定は倉庫業法の28~32条にわたって定められているので、倉庫業の運営の予定があるのであれば、しっかり理解しておく必要があります。

倉庫業法で押さえたいポイント

倉庫業を行うには国土交通省の認可が必要で、認定されずに営業すると、罰則の対象となります。ここからは、倉庫業の運営、倉庫業法の順守で押さえたいポイントについて解説します。

倉庫業は登録が必須

登録申請前に、利用したい施設が倉庫として利用可能かどうか、地方自治体や運輸局に確認する必要があります。また、登録申請には「標準倉庫寄託約款」の提出も必要です。

倉庫業登録の条件は、保管・管理する物品に応じた倉庫施設の基準を満たすことです。倉庫の種類によって基準が異なるため、所有する倉庫の施設基準を確認しましょう。

倉庫業登録には、倉庫管理主任者の選任も必要です。倉庫管理主任者の業務内容は、以下のとおりです。

  • 倉庫における火災の防止など、倉庫の施設管理
  • 倉庫管理業務の適正な運営の確保
  • 労働災害の防止
  • 現場従業員の研修

また、倉庫管理主任者になるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 倉庫管理業に関して2年以上の指導監督的実務経験を有する者
  • 倉庫管理業務に関して3年以上の実務経験を有する者
  • 国土交通大臣が指定する、倉庫管理主任者の講習修了者

そのほか、倉庫管理主任者になるには、欠格事由に該当しないことも条件となります。欠格事由は、「申請者が1年以上の懲役もしくは禁固刑に処され、執行が完了した日、または執行を受けなくなった日から、2年を過ぎていない場合」です。

未登録の倉庫にはリスクが伴う

倉庫業には、火災や自然災害などの被害を防ぐための一定の基準があります。これらの基準を満たしていない倉庫で営業をすると、火災や自然災害が発生した場合、大きな被害や損害が出る可能性があるでしょう。

具体的には、燃えやすいものを耐火性能の低い倉庫で保管すると、火災が発生しやすくなります。また、地震や火災により、倉庫から近隣住民宅に火が燃え移る可能性があります。

そのため倉庫業は登録制となっており、定められた安全基準をクリアして、国土交通大臣の認可・登録を受けなければ、倉庫業を始めることができません。

倉庫業の種類

倉庫業には種類があり、商品だけではなく、形態によっては消費者の財産の保管も可能です。ここからは倉庫業の種類によって、預けることができる物資について解説します。

普通倉庫業

普通倉庫業は、農業・工業・製造業など、さまざまな産業の物資を保管します。また貨物だけでなく、美術品や家財など、消費者の財産も保管可能です。法律上は、以下の6種類を普通倉庫と総称しています。

  • 一類倉庫
  • 二類倉庫
  • 三類倉庫
  • 野積倉庫
  • 貯蔵槽倉庫
  • 危険品倉庫

冷蔵倉庫業

冷蔵倉庫業は、10度以下で冷蔵や冷凍する商品を扱う倉庫業です。農産物や水産物、冷凍食品や畜産物などが該当します。生鮮品は0度前後、冷凍食品などでは、より低い温度で管理できる設備が必要です。

水面倉庫業

水面倉庫業とは、対象物を水に浮かべて保管する倉庫業です。原木などを川や海などの水上で保管するための倉庫となります。主に原木を保管する倉庫なので、それ以外での利用はほぼありません。

営業倉庫の契約方法

営業倉庫の契約方法には、「倉庫賃貸借契約」と「倉庫寄託契約」があります。倉庫賃貸借契約と倉庫寄託契約の違いは、倉庫に保管する荷物の管理を誰がするかです。

ここからは、2種類の契約方法について解説します。

倉庫賃貸借契約

倉庫賃貸借契約は、倉庫のスペースの一部もしくは占有して借りるために、貸借料を支払う契約方式です。倉庫の場所を借りるだけなので、商品などの管理・保管といった庫内作業は貸借人自身が行います。作業員の手配および作業内容の指示は、貸借人が指示する必要があります。

また、貸借期間満了で借りた部分を返却しなければならず、特別な取り決めがない限り、返却時には原状回復しなければなりません。

倉庫寄託契約

倉庫委託契約は、商品などを「営業倉庫」に預ける契約方式です。

「営業倉庫」は国土交通省に認可を受け、法律上の基準を満たしています。物流のプロに商品などを預けることになるので、安心して任せられるでしょう。ただし倉庫委託契約は、営業倉庫以外では契約できません。法律で禁止されているので、営業倉庫であるかの確認は必須です。

また、運用や管理は契約者が行わず、寄託契約に対する保管料には、管理費や倉庫内のスタッフの人件費も含まれています。

まとめ

「倉庫業法」が制定され、会社の商品だけでなく一般消費者の財産も安心して保管できるようになりました。倉庫の種類や設置基準によっては、管理方法が異なるので、用途に合わせて最適なものを選びましょう。




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