物流にかかわる企業において、倉庫はメーカーと消費者をつなぐ大切なものです。そして、倉庫を扱う際には「倉庫業法」を理解していなければなりません。商品の保管などに関する厳格なルールが定められているため、違反すると罰則を受けることもあります。
では、具体的に倉庫業法とはどのような法律なのでしょうか。本記事では、倉庫業登録の必要性や倉庫の種類、契約方法について詳しく解説します。
倉庫業法について
倉庫業は登録制の事業であり、国土交通大臣に認可された企業だけが営業できます。未登録状態での営業や違反行為をした場合はさまざまなリスクや罰則があり、登録には各種届出が必要なため、登録の流れや内容を理解しておきましょう。
自家用倉庫と営業倉庫について
自家用倉庫は、企業や個人が所有している荷物を入れるために保有している倉庫です。自社で使用するものを保管する倉庫や自宅の倉庫などは、自家用倉庫に該当します。
営業倉庫は、倉庫の保有者が他者の物品を預かり保管するための倉庫で、倉庫業法の対象になります。適切な倉庫の管理や商品の保管を行ったり、火災などのトラブルが発生したときにトラブルを抑制したり、受寄者と寄託者双方を守るために倉庫業の登録が義務付けられているのです。
倉庫業法の対象者
倉庫業法の対象になるのは「営業倉庫」のみで、条件は以下のとおりです。
・営業倉庫の運用を考えている事業者
これから営業倉庫を始めようとする事業者は、倉庫業法に従って事業計画や準備を行わなければなりません。事業開始後も倉庫業法を守る必要があります。
・すでに営業倉庫として登録済みの倉庫業者
国土交通省に登録済みで、すでに倉庫業を運営している事業者も倉庫業法の対象です。
・トランクルームなどの倉庫業に近い業態を営む予定の事業者
トランクルームのような倉庫業に近い事業を行う予定の事業者も倉庫業法の対象です。また、トランクルームではなく、空き部屋を使って他者の荷物を預かる場合も同様に対象となります。
倉庫業を始めるときのプロセス
倉庫業に登録申請する流れは以下のとおりです。
事前準備
営業倉庫の物件を探すにあたって、候補物件が倉庫業登録の要件を満たしているかが非常に重要です。要件を確認せずに進めると、大きな損害と手間が生じることもあるので注意しましょう。
倉庫業登録申請書の作成
提出書類の収集や申請書類の作成、申請書類への捺印など、登録申請書を作成します。
倉庫業登録申請書の提出
地方運輸局もしくは運輸支局に必要な書類を提出します。
倉庫業登録の審査
運輸局側で審査を行います。審査期間は2か月程ですが、補正の指示などが入った場合は審査期間が延長することもあります。
審査完了
審査完了後、登録通知書を受領します。
登録免許税の納付
登録免許税9万円を納付し、領収証書貼付書に納付書原本を添付して運輸局へ提出します。
営業開始
倉庫料金の設定や倉庫管理主任者の設置などを行い、営業を開始します。
倉庫料金の届出
倉庫料金の設定後、30日以内に届け出ます。
倉庫業違反の罰則について
倉庫業法に違反すると、以下のような罰則が科されます。
- 登録を受けずに倉庫業を営業した場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 他人の倉庫業のために名義を貸した場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 営業停止命令に従わなかった場合:6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
罰則規定は倉庫業法の28~32条にわたって定められているので、倉庫業の運営の予定があるのであれば、しっかり理解しておく必要があります。
営業倉庫の種類
営業倉庫には種類があり、商品だけではなく、形態によっては消費者の財産の保管も可能です。ここからは倉庫業の種類によって、預けられる物資について解説します。
一類倉庫
一類倉庫は「建屋型営業倉庫」とも呼ばれ、普通倉庫業の中で最も厳しい施設設備基準を満たす必要があります。防湿性能、耐火性能、防火性能に適合しなければなりません。また、国土交通大臣が定める防犯設備や、ネズミによる害を防ぐ設備も必要です。基準が厳しいため、ほとんどの物品を保管できますが、粉状や液状の物品、危険物、摂氏10度以下で保存が必要な物品、高圧ガスは対象外です。
二類倉庫
一類倉庫よりも基準が緩和されており、耐火性能や防火性能が必要ない倉庫です。ガラス類やセメントなどの保管が主な目的です。燃えやすいものは保管できない制約があります。そのほか、飼料や原木、でんぷん、塩などを貯蔵するのに適しています。
三類倉庫
一類倉庫と比べ、防水性能、防湿性能、遮熱性能、耐火性能、鼠害防止性能などの要件が緩和されています。そのため、濡れても問題ない製品の保管に使われます。陶磁器やタイルなどの物品が対象です。
野積倉庫
野積倉庫は、雨風や日光にさらされても問題ない物品を保管する野外の保管区画です。この区画は国土交通大臣が定める防護施設であり、防火設備や防犯用の照明設備が設置されています。原材料となる鉱物や原木、レンガなどの保管に適しています。
貯蔵槽倉庫
サイロやタンク、ホッパーなどで、穀物や液体を保管する倉庫です。防火性能や耐水性能が必要で、壁や底の強度は国土交通大臣が定めた基準に適合していなければなりません。主に、第6類に該当する液状や粉状の物品や、第1~2類の袋に入っていない小麦やトウモロコシなどの保管が可能です。
危険品倉庫
危険物や高圧ガスを保管するための倉庫です。保管する物品の種類により、消防法や高圧ガス保安法、液化石油ガスの法律を満たす必要があります。また、防湿性や防火性、防水性が求められます。主に第7類のガソリンや灯油、油性塗料などの保管が可能です。
冷蔵倉庫
物品を10度以下で保管する倉庫です。冷蔵室の温度が常に10度以下になるように、国土交通大臣の基準を満たす必要があります。主に農畜水産物や冷凍加工食品などを保管でき、食品を扱うため、温度管理が重要です。他の倉庫よりも徹底した運営が求められます。
水面倉庫
原木などの原材料を水面上で保管する施設です。「貯木庫」や「水面貯木庫」とも呼ばれます。木材が乾燥するのを防ぐため、水面上で保管します。木材の流出を防ぐ措置と、防犯用の照明設備が必要です。
営業倉庫の契約方法
営業倉庫の契約方法には、「倉庫賃貸借契約」と「倉庫寄託契約」があります。倉庫賃貸借契約と倉庫寄託契約の違いは、倉庫に保管する荷物の管理を誰がするかです。ここからは、2種類の契約方法について解説します。
倉庫賃貸借契約
倉庫賃貸借契約は、倉庫の一部または全体を借りるために賃料を支払う契約です。倉庫の場所を借りるだけなので、商品などの管理や保管作業は借りる側が行います。
また作業員の手配や指示も借りる側が担当します。契約期間が終わるとき、特別な取り決めがない限り、元の状態に戻して返却しなければなりません。
倉庫寄託契約
倉庫寄託契約は、商品などを営業倉庫に預ける契約です。営業倉庫は国土交通省の認可を受けており、法律の基準を満たしています。物流のプロに商品を預けるため、安心して任せられます。
ただし、倉庫寄託契約は営業倉庫以外では結べません。法律で禁止されているため、契約前に営業倉庫であることを確認する必要があります。寄託契約の保管料には、管理費やスタッフの人件費が含まれており、契約者は運用や管理を行いません。
まとめ
倉庫業法が制定され、会社の商品だけでなく一般消費者の財産も安心して保管できるようになりました。営業倉庫は倉庫業の登録が必須です。受寄者と寄託者の双方が安心できるよう、営業倉庫の利用前に倉庫業に登録しているか、倉庫業法を理解できているかを確認しましょう。
また、倉庫の種類や設置基準によって管理方法が異なるので、用途に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
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