土地の賃貸でよくあるトラブルとは?トラブルの事例やトラブルを避ける方法を解説

事業をするために土地を賃貸で借りて、建物を建てたい人もいるでしょう。土地の賃貸は購入と比較して初期費用の負担が軽くなります。しかし、借地契約(土地賃貸借契約)の借地権に関する法律は複雑であり、土地の貸主とトラブルに発展することも少なくありません。

本記事では、借地契約の基礎知識や種類、土地を借りた際に起こりうるトラブルの種類やトラブルを避ける方法について解説します。

借地契約(土地賃貸借契約)とは

建物を建てる目的で、土地を賃貸で借りるための契約が「借地契約」です。土地を利用する目的や契約期間、地代や禁止事項などをまとめたもので、貸主と借主の合意で締結します。

借地契約によって、借主には土地の借地権が発生します。借地権とは、建物を建てるために地代を払って土地を使用する権利です。土地を借りる際は借地借家法という法律が適用されます。借地権は契約期間や契約内容によって複数の種類がありますが、どのような種類があるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

借地権の種類

借地権の種類によって契約期間や用途が異なります。契約書に押印すると、途中で変更ができないので慎重に選びましょう。ここでは、借地権の種類を4つ紹介します。

普通借地権

普通借地権とは、用途に制限がない借地権です。契約期間は建物の構造に関係なく一律30年で、この期間を下回る契約はできません。更新時の契約期間は、1回目が20年、2回目以降が10年です。解約は原則として借主からのみ可能で、基本的に建物を壊して更地にする必要があります。

定期借地権

定期借地権も用途に制限がない借地権ですが、契約期間が決まっており、満了後は更新できずに契約が終了します。契約期間は50年以上で、これを下回る契約はできません。定期借地権は事業用や居住用などで利用できます。

事業用定期借地権

事業用定期借地権は、事業用に限定された借地権です。契約期間は10年以上30年未満、または30年以上50年未満の2パターンがあります。

契約期間が10年以上30年未満の場合、更新はなく更地にして返却する必要があります。30年以上50年未満の場合は契約更新ができ、解約時には貸主に建物の買い取り請求が可能です。契約には公正証書の作成が必要です。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、契約満了後に貸主が建物を買い取る特約付きの借地権です。契約期間は30年以上で、建物を建てても更地にする必要がありません。

買い取りを前提に土地利用の計画ができるため、貸主の負担が少なく済みます。この特約は、普通借地権や定期借地権、事業用定期借地権に付与できます。

土地を借りる際にかかる費用と相場

ここでは、土地を借りる際にかかる費用と相場の具体例を紹介します。

手付金
手付金とは、借地契約の成立を証明するために支払う費用です。手付金の相場は、契約金(権利金)の5~10%程度になります。例えば、権利金が3,000万円の場合の手付金は、だいたい150万円から300万円です。

保証金
保証金とは、貸主に預けておくお金です。土地を借りる際の担保としての役割があり、契約期間満了後に返還されます。保証金の相場は、およそ地代の6ヵ月分程度です。

権利金
権利金とは、借地権という権利への対価です。法律による決まりがなく手続きは任意ですが、慣例として支払うことが一般的です。契約期間満了時の返還はありません。

借地権の権利金の相場は、土地価格×借地権(30〜90%)で計算されます。借地権割合は、国税庁ホームページで公開されている路線価図*で確認が可能です。例えば、土地価格が5,000万円で借地権割合が5割であれば、借地権価格は2,500万円です。

*参考:国税庁「路線価図・評価倍率表」

地代
地代は土地の使用料であり、毎月の支出になります。地代の相場は、事業用の建物で定期借地契約の場合は、土地価格の4~5%が一般的です。ちなみに普通借地権の場合は、土地価格の1%未満であり、固定資産税の3倍程度になります。

更新料
更新料とは、借地権を取得した土地の契約更新時に貸主に支払うお金です。借地権更新料の相場は、借地権価格の5%程度になります。

借地権に関するトラブルの事例

ここまでは、借地権に関する基礎知識について解説しました。ここからは貸主と借主との間で起こりうるトラブルの事例について紹介します。

地代のトラブル

借主側の地代の滞納によるトラブルです。地代の滞納により貸主側から立ち退きを迫られ、トラブルになるケースは少なくありません。地代の滞納の程度にもよりますが、1、2ヵ月程度の遅れであれば軽微なため、ただちに契約解除とはならないでしょう。

地主から催告され、催告の期限までに支払いがされなかった場合は契約解除になる可能性があります。滞納したお金はすぐに支払い、トラブルを回避しましょう。

更新のトラブル

貸主都合で一方的に更新を拒否されたケースです。「一代限りの約束だった」「更地にして土地を売却したい」などを理由に、借主に立ち退きを求めてくる可能性があります。

普通借地契約の場合であれば建物が存在し地代を支払っていれば、同一の条件で更新したものとみなされるため、貸主の要求は拒否できます。定期借地契約の場合は更新ができず、契約期間満了をもって解約になるので注意しましょう。

立ち退きのトラブル

貸主から借地権を途中解約したい、法律より短い期間で契約したいと言われたケースです。

借地借家法では途中解約に関する規定はないため、貸主からの要求を拒否できます。法律より短い期間で契約することに双方が同意していたとしても無効です。これは借地権の種類によって契約期間が決まっており、決まっている年数を下回れないからです。貸主側が途中解約権を認める特約を付けたとしても無効になります。

しかし、借主側が途中解約権の特約を付けることは可能です。途中で解約する可能性があれば、借地契約を締結する際に定めておきましょう。

建て替えのトラブル

建物の老朽化により建て替えを検討している人は注意が必要になります。借地契約で増改築禁止特約が定められている場合が多くあるからです。

増改築禁止特約とは、建て替えには貸主の承諾を得なければならず、貸主の承諾なしに建物の建て替えができない取り決めのことです。貸主の許可なく建て替えをすると、契約解除される恐れがあります。このようなトラブルにあった場合は、貸主の承諾を得るために承諾料を払うのが一般的です。

借地権の売買のトラブル

廃業により、借地権を売却したい人もいるでしょう。借地権の譲渡は貸主の承諾が必要で、貸主と根気強く話し合って承諾を得ることが、借地権の売買トラブルの回避には重要です。どうしても承諾を得られない場合、借主は裁判所に申し立てれば、貸主に不利にならない形で、貸主に代わって譲渡許可をもらえます。

トラブルを回避するための方法 

ここでは、契約する際にトラブルを回避するための方法を4つ紹介します。

口頭での契約は避ける

普通借地契約の場合は、口頭での契約が有効です。しかし、トラブルがあった際に「言った、言わない」という水掛け論になる可能性があります。したがって、契約書に残しておくことは重要と言えるでしょう。

契約書の内容を隅々まで読み込む

押印する前に契約書の内容を入念にチェックし、不明点があれば納得がいくまで貸主と話し合いましょう。土地賃貸借契約書に押印すると、契約を覆すのは困難になるからです。

禁止事項を確認する

禁止事項とは、貸主が借主に対して禁止行為をまとめたものです。貸主に許可を取らない形での増改築や、原状回復が困難なほど破損する行為などが挙げられます。禁止事項を破った場合、契約が解除される可能性もあるので注意しましょう。

土地の取引相場を確認する

土地の取引相場を確認するのは重要です。相場より高い法外な費用を要求される可能性があるからです。契約書に押印すると、契約を覆すのは難しくなります。そのため、土地の取引相場を確認してから契約しましょう。

まとめ

土地を借りる際のトラブルの事例とトラブルを避ける方法について解説しました。トラブルを避けるには、契約書の内容を隅々まで見るだけでなく、借地借家法などの法律に関する知識が必要になります。貸主の言い分が違法である可能性もあるため、契約書をしっかりと確認しなければなりません。

トラブルが発生しないに越したことはありません。契約前に貸主と十分に話し合い、納得するまで契約しないことが重要です。




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